宇都宮徹壱ウェブマガジン

関東リーグの地獄っぷりを当事者目線で語り尽くす! VONDS市原×栃木シティFC×南葛SC<1/2>

 JリーグとJFLにつづき、いよいよ各地域リーグも開幕。すでに九州リーグは今月からスタートしているが、今週末からは関東リーグ1部も2022シーズンのキックオフを迎える。そこで今週は、開幕を寿ぐような座談会企画をお届けすることにした。なぜ座談会なのか? 以下、その理由を説明しよう。

 今年の関東1部で最も注目を集めているのが、2部から昇格したばかりの南葛SCであることは、誰もが認めるところであろう。今オフにビッグネームを相次いで獲得。元日本代表の関口訓充だけでも驚きなのに、その後も稲本潤一、今野泰幸、伊野波雅彦といったワールドカップ経験者が加入することになり、そのたびにYahoo!トピックスを賑わせていた。

 とはいえ(当たり前の話であるが)サッカーは相手があって、さらに言えばリーグや大会があって成立するもの。ところが、大手メディアによるハーフウェイカテゴリー関連の報道には、そうした基本的な視点がなぜか欠落していることが少なくない(それは三浦知良が今季から参戦したJFLに関しても言える)。

 南葛が注目されるのは、ある意味、当然のことである。しかしながら、どんな対戦相手がいて、関東リーグがどのようなものなのか(なぜ「地獄」と呼ばれているのかも含めて)、この機会に知ってほしいとも思う。そこで今回、南葛の岩本義弘GMに加えて、VONDS市原の永野祐太郎代表、そして栃木シティSCの大栗崇司代表にもご参加いただく、実に豪華な座談会が実現することとなった。

 もしかしたら「なぜウチを呼んでくれないの?」という関係者も、いらっしゃるかもしれない。栃木と市原は、それぞれ2回ずつ関東1部での優勝経験があり、地域CL決勝ラウンドにも進出していること。そして南葛と同じく、Jリーグ百年構想クラブであること。この2点が決め手となった。また座談会形式の場合、参加者が多すぎると議論が薄まってしまう傾向があることも、留意する必要があった。

 決して他意はないことをご理解いただきつつ、他のサッカーメディアではなかなか実現しないであろう、当WMならではのディープなディスカッションをお楽しみいただければ幸いである。最後に、今回の企画にご協力いただいた3クラブの関係者の皆様には、この場を借りて御礼を申し上げたい。(2022年3月16日、オンラインにて収録)

<1/2>目次

*スタジアムの栃木、環境の市原、元日本代表の南葛

*関東リーグが「地獄」になったのは2018年から

*なぜクリアソン新宿は2年でJFL昇格できたのか?

スタジアムの栃木、環境の市原、元日本代表の南葛

──本日はお忙しい中、お集まりいただき、ありがとうございます。関東リーグ2022年シーズン座談会ということで、過去の実績と話題性、そしてJリーグ百年構想クラブである3クラブの代表者の方々にお集まりいただきました。まずは自己紹介をお願いしたいと思います。昨シーズンの順位で、VONDS市原の永野さんから。

永野 VONDS市原の代表を務めております、永野祐太郎です。2011年にVONDS市原が立ち上がりまして、市民クラブというスタイルで600以上の市民と法人の方に株主になっていただきながら運営しております。私自身、生まれも育ちも市原。県外に住んでいた時期もありましたが、29歳の時に市原に戻り、VONDSに関わるようになって今年で7年目の45歳です。今日はよろしくお願いします。

大栗 栃木シティFC代表の大栗崇司でございます。クラブのルーツは、日立栃木サッカー部で1947年に創部。その後、企業チームから市民クラブとなり、栃木ウーヴァFCという名前でJFLを戦っていました。5年前にJFLから降格したタイミングで、いちスポンサーからクラブ代表として関わるようになりました。3月31日で39歳になります。今日はよろしくお願いします。

岩本 南葛SCGMをしています岩本義弘です。葛飾からJリーグを目指しているクラブで、キャプテン翼の作者である高橋陽一先生がオーナー兼代表取締役社長です。関東リーグ2部から入れ替え戦に勝利して、何とか1部に昇格することができました。関東1部という、とてもレベルの高いリーグにチャレンジできるのが楽しみです。今日はよろしくお願いします。ちなみに、僕は今年50歳です。

──永野さん、大栗さん、岩本さん、ありがとうございます。この3人が揃うのは初めてですので、それぞれのクラブをどう見ているのか伺いたいですね。今度は南葛の岩本さんからお願いします。

岩本 まず栃木シティさんですが、独自のスタジアムを作られたことを含めて、非常に理想的な形のクラブだと思います。僕自身、サッカーメディアの人間として何度もヨーロッパを取材しましたが、イタリアやスペインの地方クラブの雰囲気が感じられます。そんな栃木シティさんでさえ、JFLに昇格することにこれだけ苦労されていたことに、関東リーグの厳しさを実感せずにはいられません。

 VONDS市原さんは素晴らしい練習環境のもと、体制もしっかりしている印象です。昨シーズンは最後まで地域CLの可能性を残していましたし、今季もとても良い補強をされていました。われわれがトライアウトで目をつけていた選手も、かなりVONDSさんに持っていかれました(笑)。いずれにせよ、栃木シティさんとVONDSさんが、今季の優勝候補であることは間違いないと思います。

──ということですが、大栗さん、永野さん、いかがでしょうか?

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