宇都宮徹壱ウェブマガジン

われわれは「PV至上主義」にすべてを委ねてよいのか? 永里優季移籍の「煽り見出し問題」をきっかけに考える

 川崎フロンターレのバンディエラ、中村憲剛の引退発表を知ったのは、サンガスタジアム by KYOCERAの記者席にて、京都サンガF.C.対モンテディオ山形を取材中のハーフタイムのことであった。先週のサッカー界も、さまざまなトピックスがあったが、この衝撃ですべてが吹き飛んでしまった。憲剛にインタビューしたのは一度だけだが(しかも随分と昔の話だ)、それでも深い感慨と共に考えたことはある。この件は、しかるべきタイミングで記すことにして、今回はもうひとつ、個人的に気になっていた件について語ることにしたい。

 先月29日の夜、日刊スポーツのウェブ版が《永里優季選手の記事でおわびします》という記事を掲載(参照)。「男子チーム加入の永里優季が米移籍、クラブ寝耳に水」という見出しが、同選手が無断ではやぶさイレブンから年内に移籍するような印象を与えるものだったとして、見出しと記事の内容の一部を修正した上で謝罪した。これが、先週から「個人的に気になっていた件」なのだが、今さらこの話を蒸し返そうというわけではない。

 今回の日刊スポーツの謝罪そのものは、高く評価すべきだと個人的には思っている。もちろん、やってしまったことは決して褒められたものではない。しかしながら、永里選手の抗議を受けて迅速に対応し、事実をうやむやにすることなく謝罪記事を掲載するということは、これまでのスポーツ紙では見られなかったことだろう(少なくとも私は記憶にない)。ゆえに、その潔さについては敬意を表したい。加えて問題の本質は、日刊スポーツのみにあるわけではない。むしろそれは、多くのメディアが取り込まれている「PV至上主義」に求められよう。

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