宇都宮徹壱ウェブマガジン

すべてはジェフユナイテッドライフを謳歌するために 今明らかになる「いぬゆな屋」社長の足跡<1/2>

 先週と今週は、ジェフユナイテッド千葉のアシストスポンサーとなった「いぬゆな屋」社長、いぬゆなさんのインタビューをお届けする。怪しいツーショットが話題となった動画篇に続いて、今週のテキスト篇では、いぬゆなさんのキャリアと発信力について深堀りする内容となっている。少年時代には引きこもりを経験し、長いバンド活動を経た末での起業。一方でジェフ千葉のサポーターとなったのは、意外と最近のことで2010年からだという。

 いぬゆなさんといえば、ジェフ千葉に関連したTwitterでのユニークな発信がよく知られている。しかしこの人の強みは、むしろ他者による発信を見極める力にあるように感じる。たとえば清水エスパルス公式による、4月1日のこちらのツイートについて、いぬゆなさんは問題点を的確に見抜いた上で改善点を提言している(参照)。端的に言えば、この「発信の最適化」というナレッジこそ、「いぬゆな屋」が最も得意とするサービスなのである。

 今回のインタビューでは、「いぬゆな以前」のストーリーから掘り起こし、独自の発信力を培ってきた経緯、そしてジェフ千葉との出会いなどについて語っていただいた。一方で興味深く感じられたのが、Bリーグの千葉ジェッツふなばし社長(現会長)の島田慎二氏との関係性。同氏への強いシンパシーとリスペクトが、のちの「いぬゆな屋」につながっていくのだから面白い。このテキスト篇も、最後までお付き合いいただければ幸いである。(取材日:2020年3月9日@東京)

<目次>

*フクアリ初観戦で感動したのは「音響」

*発信力の原体験となったネットと深夜放送

*なぜ「裏マスコット総選挙」を続けるのか?

*千葉ジェッツの島田慎二社長との出会い

*チーム島田への参加とJクラブのSNS発信

*「会社が潰れない限りスポンサーも続ける」

フクアリ初観戦で感動したのは「音響」

──いぬゆなさんがnoteで、ご自身の「これまで」を振り返った記事、とても興味深く拝読しました。少年時代の引きこもり体験とバンド活動、そしてジェフユナイテッド千葉との出会い。これらがどうつながっていくのか、あらためてお聞きしたいと思うのですが、引きこもり時代というのは小学生時代からだそうですね。

いぬゆな そうです。高学年くらいから中学2年まで、行ったり行かなかったりという時期があったんですよ。変に大人びて、周りの同級生を見下していているような嫌なガキで(苦笑)。「学校に行くよりも、家でゲームをやっているほうが楽しいや」って思っていたんです。その頃やっていたのが、セガサターンの後継機のドリームキャストで、簡単にインターネットに接続できたんですね。そこからネットの世界に触れたという感じで。

──あまりゲームには詳しくないんですが、セガといえばJリーグ黎明期の頃、ジェフの胸スポンサーでしたよね?

いぬゆな そうですね。セガサターンは『Jリーグ プロサッカークラブをつくろう!』も作っていました。ジェフとの出会いという話でいえば、小学生の時に親に連れられて臨海で試合を見たことがあったんです。相手は京都パープルサンガで、当時所属していたラモス瑠偉が目当てだったんです(笑)。そうしたら後ろの席にいた酔っぱらいが、ジェフのGKだった下川(健一)をやたら野次っていたんですよね。「ちゃんとやれ!」みたいな。それがすごく不快で「二度とジェフの試合に来るか!」って、その時は思いました。

──なるほど(苦笑)。バンド活動を始めたのは、高校時代からですか?

いぬゆな そうです。わかりやすいところで言うと、ミスチルみたいなのとか、暗い感じのサカナクションとか(笑)。僕はベースで、大学卒業後も10年くらいやっていました。当時は、そのままミュージシャンになることも考えていたんです。バンドで一度有名になれば、そのまま業界に潜り込めるかもしれないとか。ただし、続けているうちに「音楽業界はちょっと辛いな」と思うようになって。

──どのあたりに辛さを感じました?

いぬゆな お金ですよね。回っているところには回っているんだけど、自分たちがライブをやる時は基本的に持ち出しでした。スタジオで練習するときもね。ライブハウスなんかに行っても、店長クラスの人でも生活が潤っていない感じで、ちょっと別の方向に行ったほうがいいかなと思うようになっていたんです。ちょうどインディーズのレーベルと契約するかどうかのタイミングで、たまたまメンバーが体調を崩したこともあって、それでバンド活動もここまでかなって思って。それが5年くらい前ですね。

──2015年ですよね。では、ジェフのサポーターになったのは?

いぬゆな さらに5年前だから2010年。ちょうど10年前になりますね。たまたまフクアリで水戸ホーリーホック戦を見たんですよ。その時に感動したのが、スタンドからの声援が屋根に反響していて、まるで5万人の聴衆が集まるライブみたいだったんです。その時はまだバンドをやっていたので「これはすごいな」と。

──「この選手が」とか「この戦術が」じゃなくて、まずは音響から入ったと(笑)。

いぬゆな というか、いまだにサッカー自体には興味があまりないですね(苦笑)。代表戦をやっていればTVで見ますけど、4バックだとか3バックだとかはどっちでもいいだろうと。それで次に観に行ったのが、リーグ戦終盤のホームでのギラヴァンツ北九州戦。これに負けると、J1昇格の可能性は絶たれるというゲームで、終了間際に佐藤勇人が決めて可能性を残したんです。結局、そのあとに負けて昇格の夢は消えるんですけど、あの時の勇人のゴールが、僕がジェフサポになった瞬間でしたね。

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