元清水エスパルス社長 左伴繁雄が語る F・マリノスと湘南での日々<1/2>
先週に引き続き、元清水エスパルス社長で、このほどB3リーグのベルテックス静岡のエクゼクティブ・スーパーバイザー就任が決まった左伴繁雄さんのインタビューをお送りする。おかげさまで先週の動画インタビューは大好評で、2本の動画の視聴回数は1万4000回以上、チャンネル登録者数も2倍の500人超えを達成することができた。
もっとも、清水時代を中心に語っていただいた動画編は、ボリューム的にはインタビュー全体の半分でしかない。今週のテキスト編では、J1連覇を達成した横浜F・マリノス時代(01~07年)、そしてクラブの財政基盤安定のために地を這うような営業を続けた湘南ベルマーレ時代(08~15年)について語っていただいている。
動画をご覧いただいた方ならご存じだろうが、ユーモアを交えながらズバズバと語るテイストは今回も変わらず。F・マリノスと湘南についても、タブーなきトークを炸裂させるのだから、面白くないはずがない。先週の無料動画で当WMの存在を知った方は、この機会にぜひとも入会をご検討いただければ幸いである。(取材日:2020年2月10日@東京)
<目次>
*「松田直樹? 知らない」「オフサイドって何だ?」
*カルロス・ゴーンが突きつけた厳しすぎる条件
*初めて訪れた日本平に「サンダーランド」を見る
*「左伴さんが来るような会社じゃないんだから」
*パワハラ問題は「許されるものではない。けれども」
*クラブは変わっても変わらないのが「権限と責任」
■「松田直樹? 知らない」「オフサイドって何だ?」
──あらためまして、左伴さんがサッカークラブの社長になった経緯について伺いたいと思います。ご自身はまったくサッカー経験がなく、それどころかサッカーに関心もほとんどなかったとか。にもかかわらず、横浜F・マリノスの社長に就任したのは、やはりカルロス・ゴーンCOO(当時)の決定だったわけですね。
左伴 そういうことです。私自身、ぶっちゃけマリノスの社長に、なりたくてなったわけではないんです。むしろ「左遷か?」と思ったくらいで(苦笑)。
──この一見すると不可解な人事の背景には、何があったんでしょうか?
左伴 これも日産リバイバルプランの影響だったんですね。「これからは若い役員をどんどん作っていこう」というプログラムがあって、私も人事の仕事をしていたものだから関わっていたわけです。その時に思い出したのが、英国に赴任していた時に見ていた、海外基準のキャリアアップでした。わかりやすく言うと、ひとつの会社に縛られるのではなく、ヘッドハントされてナンボの世界。会社を変えて、違う環境でも結果を出せる人が、普遍的に経営者としての素養があると見なされていたわけです。
──日産英国製造会社の立ち上げで、左伴さんがサンダーランドにいらしたのは1980年代の半ばでした。その時の記憶があって、まずは社内の若手を外に出してみて、どこまで優秀なのか試してみようという考え方だったんでしょうか?
左伴 わかりやすく言うとそうなんですが、まったく違う会社に行って「さようなら」と言われてしまうのはまずい(苦笑)。なので、まずは子会社の社長ポストをいくつか用意をして、そこに社長として送り込むと。そこである程度の業績を収めることができたら、本社に呼び戻して偉くしようということです。そういうプログラムを提案したら、常務から「ゴーンさんに推薦しておいたよ」と言われて。それでゴーンさんに確認したら「マリノスに行きなさい」と(笑)。
──いきなりサッカー業界に行きなさいと(笑)?
左伴 実はもうひとつ、オーテックジャパンという候補もあったんですよ。今は福祉車両とか商用特装車がメインですけど、もともとはスカイラインの生みの親の桜井眞一郎さんが改造車を作るために立ち上げた会社なんです。車作りをしている人間からしたら、まさに憧れでしたよ。そこに出向だったら潰しもきくから、日産に戻ってもそんなに問題ない。でも、マリノスはねえ。
──それまでF・マリノスの試合はご覧になったことは?
左伴 まったくなかったです。マリノスで知っていたのは中村俊輔だけ。「松田直樹? 知らない」「オフサイドって何だ?」という感じでしたよ。2001年まではね。
──ええっ?!
左伴 だって、それまで生産部門とか人事部門にいて、1円2円の原価低減を現場の皆さんにお願いする仕事をしていたわけですよ。それがいきなり「誰それという選手を獲得するのに1億5000万円かかる」みたいな話をされると「何だ、そりゃ?」って話ですよね。こっちは組合員の賞与を1円上げるのに、どれだけ苦労しているのか知っているのかと。
──そんな左伴さんに、なぜゴーンさんはF・マリノス行きを命じたんでしょうか?
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