宇都宮徹壱ウェブマガジン

徹マガの今後について、重要なお知らせ  主筆・宇都宮徹壱が今、考えていること

270_phTOP

2015年最後の配信となった。今回はこの場を借りて、会員の皆さんに重要なお知らせをしなければならない。

2010年5月24日の創刊から270号まで続いてきた徹マガは、来年6月末(294号)をもって休刊することになりました。これまで長きにわたりご愛読いただいた皆さまには心より御礼を申し上げます。ありがとうございました。また、払い戻し等でご迷惑をお掛けする皆さまには、徹マガ主筆として深くお詫び申し上げます。申し訳ございませんでした。残り6カ月となりましたが、充実した内容のコンテンツをご提供するべく努力いたしますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

ここで文体を戻して、今回の決断に至った理由について説明したい。休刊の一番の理由は、主筆・宇都宮徹壱と編集長・澤山大輔による現状の体制が維持できなくなったからである。といってもケンカ別れをしたというわけではなく、メルマガ創刊当時と今とでは、お互いの仕事の内容や方向性、そして忙しさが大きく変化してきたことが主たる要因である。

来年の6月で創刊から丸6年。国内のサッカーメルマガとしては、間違いなく最長記録である。6年間は短いようでありながら、それぞれの仕事をめぐる環境や考え方に変化を生じさせ、体制の維持を困難にするには十分すぎる長さであった。その点は、まずご理解いただきたく思う(澤山からは、編集長コラムにて本件についてのメッセージがある)。

一方で私個人としてもここ数年、メルマガというメディアに対して、ある種のジレンマを抱えていたことを告白しなければなるまい。1万字から2万字のボリュームのメルマガを月4本配信し続けるのは、楽しさや面白さがある反面、それなりの時間と根気を要する。確かに、すべての原稿を私ひとりで書いているわけではないが(千田善さんや篠原美也子さん、そして服部倫卓さんといった連載陣の皆さんには本当に感謝している)、それでも週3日はメルマガの作業に充てる必要があった。

もちろん徹マガ以外にも、取材や執筆の仕事はある。特に今年の秋から冬にかけては、国内外の取材が立て込んだこともあり、睡眠と食事と入浴以外の時間はずっとPCを開いて執筆していたような気がする。忙しいなりに充実感はあった一方で、取材以外にインプットする時間をなかなか得られないという悩ましさは一向に解消されることはなかった。サッカー以外の本はほとんど読めなかったし、映画や音楽に触れることもほぼ皆無だった。

とりわけ私が最もジレンマを感じていたのが、2013年の『フットボール百景』以降、書籍を出せていない(つまり書籍の執筆時間を捻出できない)ことであった。たまにファンの方から、私の書籍へのサインを頼まれることがある。もちろん喜んでサインさせていただくのだが、差し出された本は当然ながら過去の作品ばかり。うれしい反面、ブックライターとしての仕事ができていないという事実を突きつけられたような気がしてならなかった。

来年の3月1日で私も50歳になる。今年の4月に76歳で亡くなった私の父の年齢まで、あと26年。今から26年前が平成元年だったことを思えば、残された時間は意外と長くないような気がする。そういえば、この一年で老眼が一気に進んだし、髪のボリュームも減ったような気がする。老いへのプレッシャーを感じる中、限られた時間で自分が何をなすべきか真剣に考える必要性を強く感じる日々が続いた。今回のメルマガ休刊の決定は、そうした私自身の事情も色濃く反映されていたことは、この場で明らかにしておきたい。

かくして徹マガは、今年6月いっぱいで休刊となることが決まった。ただし、個人メディアそのものは以後も何らかの形で続けていきたいというのが、現時点での私の考えだ。理由は3つ。まず、取材のアウトプットの場としての有効性を感じていること。次に、当メルマガで会員になっていただいた方々との「つながり」をできれば維持したいこと。そして、取材費を捻出する上でもはや紙媒体に過度の期待が持てないこと。とりわけ3番目は、私だけでなく業界全体にとっての死活問題となっている(私自身、今年は紙媒体での連載を2本失った)。

新しい個人メディアが、どのような形でいつスタートするかについては、決定次第、あらためてお伝えする。しかしまずは、休刊が決まった徹マガをさらに盛り立てていくことに、主筆として注力していきたい。6年間にわたって続いてきた当メルマガが、有終の美を飾れるようにスタッフ・連載陣一同、努力してゆく所存である。会員の皆さんには、どうか最終号までお付き合いいただければ幸いである。

<この稿、了>

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ