中野吉之伴フッスバルラボ

【きちルポ】長谷部誠のドイツでのキャリアを振り返る①「常に主体性を持って一生懸命行動すれば、もうそこには真実がある」

▼ 唯一無二のキャリア

元日本代表キャプテンの長谷部誠が今季限りでプロ選手として現役引退することを表明した。

08年1月にドイツのヴォルフスブルクへ移籍した長谷部は、08-09シーズンにレギュラー選手としてブンデスリーガ優勝を果たす。ニュルンベルクを経て2014年にフランクフルトへ移籍すると、18年ドイツカップ優勝、22年にはヨーロッパリーグ優勝に多大な貢献。2018-19シーズンにはドイツのサッカー専門誌キッカー選出のブンデスリーガベストイレブンにも選ばれている。

確かなスキルとインテリジェンスの高さ、追随を許さないプロフェッショナルさは年を重ね続けるごとに円熟味を増し、チームにとって欠かせない戦力として契約延長を何度も勝ち取ってきた。

24年1月18日に40歳の誕生日を迎えた長谷部はクラブ史上最年長出場記録保持者であり、リーグ全体でもフィールドプレーヤーとして歴代5位に入る。またブンデスリーガ通算383試合出場は外国人選手で歴代3位の記録となっている。

記者会見の様子はこちらで丁寧にまとめさせてもらったので、まだの方はぜひ読んでいただきたい。長谷部の心構え、リスペクトある人間関係の築き方、言葉のチョイスのうまさ。いろんなことを感じられるはずだ。

さて、フッスバルラボでは長谷部のこれまでをコメントとともに振り返ってみたいと思う。

08年1月にヴォルフスブルクへ加入してから今季が17シーズン目。今回の記者会見でこれまでのキャリアの中で最高だった瞬間を尋ねられ、「フランクフルトでのヨーロッパリーグ優勝がそうなのではないかと思うがどうでしょうか?」と振られた長谷部は、「キャリアでいろんなことが確かにありましたね。たくさんの思い出がありますけど、今はまだあまりしゃべりたくないです。シーズン後にゆっくりお話ししましょう。今は今週末と残りのブンデスリーガに向けて集中したいです」と答えていた。現状を考えたときに、模範解答ともいえる切り返し。

その中で一点彼がふれていたことがある。

「でも、難しい時期も過ごしました。ニュルンベルクで降格もあったし、ケガもありました」

記憶や記録というのはポジティブなものへひかれがちだ。輝かしいキャリアの光の部分ばかりが取り上げられ、「なんと素晴らしい選手キャリアだったことか!」ときらびやかに装飾されていく。でも、どんな選手にも、どんな人にも、試練の時、苦難の時期、辛酸をなめて叫びだしたくなる瞬間はある。

そうしたことを受け止めて、自分にできることを見つけ出して、何度も何度も壁を乗り越えてきたから、記録的な選手となったのだろう。

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