中野吉之伴フッスバルラボ

【ゆきラボ】ドイツの民族衣装と服装マナーの話

こんにちは!夏休みまであと1週間と迫ったここドイツのバーデン・ヴュルテンベルク州。7月末頃までの夏のセールが終わると、気候はまだ暑くても、そろそろ秋物が店頭に並ぶのは日本と同じです。同じ頃、7月末から9月頃まで店頭に並ぶのがこちらのイラストの衣装。

https://www.ac-illust.com/

ディアンドルと呼ばれるこの衣装は、もともとドイツ南部のバイエルン州からオーストリアのチロル地方、リヒテンシュタインやスイス・イタリアのアルプス地方などで着られている、女性の民族衣装です。

イラストでおわかりのとおり、以前は、オクトーバーフェストに代表されるような、バイエルン地方のお祭りのときに着るものという扱いでした。2007年頃の話ですが、当時、フライブルクのデパートや衣料品店では置いているところがほとんどなく、日本の友人に「ディアンドルかわいい!欲しい!」と頼まれても入手できなかったので、ネットオークションで購入して日本に送った記憶があります。

時は流れて、オクトーバーフェストという名前を冠したビール祭りはドイツ全国、さらにドイツ国外にも広がりました。日本でも日比谷やお台場などで開催されていますよね。それと同時に、お祭りの衣装としてのディアンドルも全国的に広まり、地元のビール祭りなどにこの服を着ていく人が増えました。

今や全国区になったディアンドル。本来はディアンドルを着る地域ではなくても、観光・サービス業などを中心に、女性スタッフがディアンドルを着ていることもあります。こちらの写真では、レストランの女性スタッフとともに、最近ドイツにもお目見えしたネコロボットもディアンドルを着て(?)います。

今では、ここフライブルクでもディアンドルは普通に売られています。ちなみにお値段は、リーズナブルなもので20ユーロ(3000円くらい)から。上半身のボディラインにぴったり沿うデザインなので、フィット感にこだわりたい人は仕立て屋でオーダーすることも。上質な生地に職人さんの手刺繍が施された高級タイプは、日本円にして10万円を超えるものもあります。

ディアンドルとは別に、フライブルクをはじめとした黒い森地域で親しまれている民族衣装がこちらです。白いブラウスに黒系のドレス、そしてボレンフートと呼ばれる赤い毛糸のポンポン飾りを盛り付けた麦わら帽子をかぶります。最近はディアンドルを意識して、胸元が開いた民族ドレスやブラウスを着る人もいますが、伝統的な黒い森の衣装は首周りがぴったり詰まっているのが特徴。色も柄もカラフルなディアンドルに対して、この地方では白のブラウス、黒と赤を基調にしたドレスに赤い帽子と、色もきっちり決まっています。

1917年に、この衣装を身につけた女性を主人公にしたオペレッタ「シュヴァルツヴァルドメーデル(黒い森のお嬢さん)」がベルリンで上演されて話題になりました。戦後の1950年には、映画版が公開されてドイツ全土で大ヒット。ちなみにこの映画、ドイツ初のカラー映画だったそうです(参考サイト)。緑に映える白いブラウスに、黒いドレス、赤い帽子の主人公は強烈な印象を残したのでしょう。

以来100年以上経っても、シュヴァルツヴァルドメーデルや赤い帽子は、この地方ならではのものとして愛され、お土産品などに頻繁に登場する定番モチーフになっています。ただし、ディアンドルのように一般の人がお祭りに着るものではないらしく、衣料品店では売られていません。この地域のお祭りやイベントのときに、シュヴァルツヴァルドメーデルの格好をした女性が登場します。そういえば、フライブルクマラソンのスタートとゴールのときもシュヴァルツヴァルドメーデルが応援してくれたんでした。

シュヴァルツヴァルドメーデルがいっぱいの土産物屋

服の話から続けて、後半はドイツのドレスコードの話です。

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