中野吉之伴フッスバルラボ

【きち日記】ヘルタの降格。フランクフルトの喜び。フライブルクの達成。グラスホッパーの挑戦

▼ 23年5月20日/ブンデスリーガ33節ヘルタ対ボーフム

残すところあと2節というこのタイミングだからこそ。残留をかけたこの直接対決を取材先に選んだ。

基本的に通信社や各新聞社は日本における需要の高い選手がプレーする試合から順番に通信員を手配する。ただ今日ではブンデスリーガでプレーする日本人はかなり多い。同日に試合が重なることも普通だ。

数年前であれば各社通信員の数も多かったので、どれだけ試合が重なっても日本人取材者が一人もいない試合というのはほとんどなかった。逆に1試合しか行われない金曜日や2試合開催の日曜日は一会場に10人前後の日本人取材者が殺到する時代もあった。

今はさすがにどの会社も毎節そこまで完璧に日本人選手をカバーすることはなくなった。各クラブからそれなりに選手情報は出てくるし、広報経由でコメントが送ってもらえるようにもなっている。試合にいかなくてもコメントがもらえる時代。便利といえば便利。

でもだからこそ、これまで以上に、取材する側がどんな観点でどんな試合を取材先に選ぶのかが大事になってきていると思うのだ。

シーズン終盤でのボーフムとヘルタの残留争いには《意地のぶつかりあい》になりそうな雰囲気があったし、だからこそ何かが起こりそうな気もしていた。サッカーはだれがどれだけ点を決めたとか、誰がどれだけ勝った/負けたとかだけで測られるものではない。

スタジアムにはどんなリーグにもどんな試合にも《最高の瞬間》が舞い降りるチャンスがあるのだ。

それに今季浅野拓磨の取材に何度か足を運びながら、一度も試合後話をする機会がなかったから、じっくり話が聞ける機会が欲しかったというのもある。

予想通り、肉弾戦がピッチのあちこちで起こり、小競り合いも少なくない。ヘルタがうまく先制に成功する一方、ボーフムはうまく攻撃チャンスを作り出すことができないまま、試合は終盤を迎えていた。

先制ゴールに喜ぶヘルタファン

僕は試合終了まで記者席から動かないようにしているが、オリンピアスタジアムはその構造上、試合終了前にミックスゾーンへの移動をしなければ間に合わない。ギリギリまで粘ってから駆け出す。記者席は最上部でミックスゾーンは最下部。階段を駆け下りて、地下通路を抜けて、階段をさらに下りていく。

最後の階段を下りているときにスタジアムからのうねり声が聞こえてきた。何かが起こったんだ。どっちだ?位置関係からしたらボーフムサポーターから聞こえる。まさか?

ミックスゾーンへたどり着き、そこにあるモニターで確認した。終了間際コーナーキックから途中出場のケビン・シュロッタ―ベックが値千金の同点ゴール。ヘルタのオリンピアスタジアムは静まり返った。

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