中野吉之伴フッスバルラボ

【対談】レネ・マリッチとの対談から考える「サッカーというチームスポーツで個々の特徴を発揮するために大切なこと」②

▼ サッカーはチームスポーツとは?

サッカーは個々の選手パワーの総量で勝負が決まるスポーツではない。どれだけ優れた資質を持った選手が集まっていたとしても、チームとして機能しなければどうしようもない。

ブンデスリーガを見ていても、リスト上にある選手それぞれのクオリティを単純比較したら、きっと今の順位表のようにはならない。ものすごい長所を持っている選手がいて、そのジャンルだけでみたらリーグトップレベルの選手がいたとしても、それがチームの中で武器として起用される戦い方が整理していなかったら、やはりなかなかうまくいかないものだ。

ドイツ語でGruppendynamik(グループダイナミック), Teamdynamik(チームダイナミック)という言葉がある。グループで、あるいはチームとしてプレーすることで、個々それぞれの力が有機的に絡み合い、個々それぞれの力総量を超えたパワーを発揮する状況を示す。

日本語でいえば《支え合う》《助け合う》《補い合う》ということだが、まさにそれがチームスポーツの醍醐味だ。優れたチームというのは、まるで一つの生命体であるかのように共通意識の集合体としてフルパワーでプレーし続けることができるのだ。そうなると、それぞれの《認知》《判断》《決断》におけるずれやタイムロスが極めて少なく、またそこで例えずれやロスがあったとしても、それをすぐさま把握して修正・対応することができる。

そうなっていくためには、チームとしてプレーすることの意味と意義を正しく知り、様々な取り組みを通して熟成していく過程を体験することが欠かせない。その中で、互いを知り、互いに深いところで信頼しあい、表面的なことを褒め合うだけではなく、時に自分の弱さをさらけ出すことをいとわず、ダイレクトに建設的な批判をし合うことができるようになっていくことが成長につながっていくのだ。

個人としても、チームとしても。

だから、小さなころからチームとしての成長を実感できることが肝心だし、そのなかでプレーする喜びを積み重ねていくことがとても大切ではないだろうか。個々それぞれが頑張っているよりも、チームとして戦えている実感があり、それがとてもワクワクで、うれしくて、楽しくて、かっこよくて。そんな経験ができる現場になっているだろうか?

サッカーには個々のスキルアップはもちろん大事。フィジカルアプローチも、メンタルアプローチもめちゃくちゃ大切。戦術理解はサッカーゲームのベースだ。

でもサッカーはチームスポーツということへの原則的な理解がないと、そうした要素をうまく生かすこともできない。だから幼少期からのサッカー環境、育成期のトレーニングと試合環境、年代に応じた子どもたちとの関わり方を学び、実践することが、ものすごく重要なのだ。

ザルツブルク、ボルシアMG、ドルトムントでマルコ・ローゼ監督の右腕として重要な役割を担っていたレネ・マリッチとの対談では、そんな育成年代においての指摘もあった。

後編の今回はそのあたりの話をお届けしたい。

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