中野吉之伴フッスバルラボ

【ゆきラボ】息子のクラスで行われたソーシャルトレーニング。6年生の子どもに「人権」を教えるということ

こんにちは。ここ何週間かのドイツは春闘の時期にあたり、毎週のようにどこかしらで何かしらのストライキやデモが行われています。お隣のフランスでは、年金制度改革に反対するデモが激化かつ長期化して大問題になっているのですが、フライブルクで行われているデモは参加者が市街地を練り歩くだけなので、フランスに比べると基本的には平和な光景です。

鉄道関係のストライキでは交通機関に大きな影響が出ますし、保育園や幼稚園がストを起こせば親は困りますし、医療機関でストが起きれば、緊急性の低い検査や手術は延期になります。影響を被る側からすると、もちろんストライキなんてないに越したことはないのですが、とはいえ年に数回はこういうことは起こるものだよね……ということはみんな理解しているので、ストの予定が発表されたら淡々とリスケジュールするしかありません。

デモ隊と警官隊が衝突、みたいな荒れたデモは幸いにしてフライブルクでは見聞きしたことがありません

フランスで、清掃業者がストライキを決行したため、収集されないゴミが歩道にあふれているというニュースは日本でも報じられていると思います。ストをすることへの批判ではなく、ただの一個人の素朴な疑問として思うのは、溜まりに溜まったあのゴミを、ストライキが終わったあとで、まとめて片付けるのって苦痛じゃないのかな?ということです。

私だって家事をストライキできるものならしたいですが、山積みになった食器や洗濯物を想像するだけでぐったりするので、これまた心を無にして淡々と片付けるのみです。家事は溜めないに限ります……

ちなみに私はコロナ以降ずっと自転車通勤、子どもたちも自転車通学なので、交通ストの影響はそれほど受けずに済んでいます

さて、前回はドイツ語の悪口、罵り言葉の話を書きました。少し付け加えたいのは、いわゆる放送禁止用語ではない種類の言葉でも、刺さるし人を傷つけることはもちろんある、ということです。

日本で大学生だった頃、母校に美輪明宏さんが講演に来てくださったことがありました。そのときに「『くせに』をつければなんでも差別用語になるし、なんでも人を侮辱する言葉になるんですよ。男だとか女だとか、ただの名詞なのに、『男のくせに』とか『女のくせに』とか言ったとたん差別になるでしょう」と美輪さんがおっしゃっていたことを、20年以上たった今でも強烈に覚えています。

差別用語や罵り言葉を使わなくても、言葉には人を深く傷つける力がある。あからさまに毒を含んだ差別的な言葉でなくても、それが人に刺さってしまうことがある。私は週に一度コラムを書くだけのささやかな発信者ですが、それでも、言葉を扱う者としては自戒の念を込めて常に胸に留めておくべき事実だと思います。

イメージ https://www.photo-ac.com/

さて、前回のコラム後半では、6年生の次男のクラスで子どもたちの言葉遣いの荒さ、乱暴さが学校で問題になり、「ソーシャルトレーニング」なるものが実施された、ということを書きました。先にお断りしておくと、実際に体験した息子本人としても、話を聞いた親としても、「?」と思った面と、興味深く腑に落ちた部分と、両方含みのトレーニングでした。

発案者である担任・副任の先生は「トレーニングをやってよかった、やった意義はあった」と言っていますが、受けただけでクラスの雰囲気ががらりと変わるような、魔法のようなトレーニングではなかったことは確かです。

ですから、今回は自分の備忘録的な意味合いで、このソーシャルトレーニングがどんなものだったのかご紹介していこうと思います。よろしければ後半もお付き合いください。

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