【インタビュー】ドイツW杯前に取材した警察署長へのインタビュー。安全対策への考え方は今でも大変に参考になるものがあった
▼ 昔のインタビューメモを発掘
前回の《きちログ》コラム「人見知りだった僕が通信員としての仕事を通して身につけていったコミュニケーション能力」のなかで、通信員になりたてのころにワールドカップへ向けた準備を調べるために、取材をしたことがあるというのを書いた。
警察署、観光局、組織委員会。いろんなところでいろんなことを聞いたわけだけど、どの話も面白かったなぁと思いだしたりした。「そういえば、あの時のデータってまだ残っていたかな?」と思って調べてみたら、無事に見つけることができた。
いま読み返してみてもいろいろと興味深いことが語られているので、今回はその中からベルリン警察署長ユルゲン・クルークさんとのやり取りをご紹介したい。
時は2005年8月17日。うだるように暑かったのを覚えている。「ワールドカップに向けてのセキュリティ対策に関して、どなたか責任者の方にインタビューさせていただけませんか?」というこちらの申し出に対して、快く応じてくれたのがクルーク署長。
《ワールドカップに向けてどんな準備をしているのか》《特別なフーリガン対策を考えているのか》《歓楽街の営業時間制限はあるのか》などをテーマにお答えいただけた。
人間の習性や安全対策への考え方には、今読んでも大変参考になる指摘があるので是非ご一読いただきたい。
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中野 本日はお時間を取っていただきありがとうございました。いよいよ来年ワールドカップが開催されますね。現時点でどのような準備段階なのでしょうか?
クルーク ワールドカップに向けての準備は一年前より、つまりもう行なわれている。まずドイツ警察というのはそれぞれの州警察が州内の規則や法律を決めている。全体をまとめる《連邦警察》というのももちろん存在するが、あくまでもその州の責任を担っているのは自分たちだ。
ワールドカップのセキュリティーコンセプトに関しても同様だ。つまり各州の首脳陣が集まりカンファレンスを開いて基準となる方針を作成し、それを元に各都市が対策を練っていく。それぞれの町の規模や状況はそれぞれ違うからね。
私が思うに、ワールドカップの際に注意すべきはスタジアムよりも市内の飲み屋やスポーツバー、大型スクリーンの置かれることになる会場だよ。スタジアムのチケットはそんなに多くにないんだ。スタジアムに80000人収容できたとしても、ワールドカップではそれ以上のサポーターが押し寄せてくる。
バーやパブリックビューイングといった場所にはかなりの人出が予想されるし、しかもその多くの人々が既にフラストレーションをもっているという前提条件がつくんだ。チケットを手に入れられなかったのだから。スタジアムにいる人々はチケットが手に入っている段階で危険度が下がると言えるだろう。
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