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なぜ新スタジアムのビジター席に屋根がないのか? モンテディオ山形が推し進める「生存戦略」<1/3>

 88日、モンテディオ山形は2028年開業予定の新スタジアムに関して、建設の発注先が決定したことを発表。併せてメディアブリーフィングを行った(詳細はこちら)。その内容と同じくらい興味深かったのが、公式Xに対する反応である。

 最も多かった指摘が、ビジター席に屋根がなかったこと。これについては、対戦相手のサポーターだけでなく、山形のサポーターからも疑義のポストが散見された。ビジター席に屋根がない事例は、今年オープンした金沢ゴーゴーカレースタジアムが思い浮かぶが、現状のキャパシティはJ2基準の1万人。今後の増築も視野に入れながら、まずは屋根3面という結論に至っている。

 これに対して山形の新スタは、完成の時点でJ1基準の15000人収容。発表されたデザインは最終形ではないものの、おそらく屋根が4面になることはないだろう。今回、山形への取材を思い立った一番のきっかけは、「ビジター席に屋根がない」明確な理由を知りたかったからだ。

 取材に応じていただいたのは、モンテディオ山形代表取締役社長の相田健太郎さん(写真左)、そして執行役員の鈴木順さん。ホームゲーム当日のお忙しい中、お時間をいただけたことに、あらためて感謝を申し上げたい。

 おふたりへのインタビューから明らかになったのは、問題となっている「ビジター席に屋根がない」ことが、実はものすごく些末なものでしかない、と感じられたことだ。というよりも、現在話題になっている広島のEピースや、間もなくオープンする長崎のスタジアムシティとは違った意味で、山形の新スタは野心的な施設であることが十分に理解できた。

 令和時代の新スタジアムは「ピッチの見やすさ」や「快適さ」は当たり前。今後、地方都市でスタジアムを作る場合は、資材費や人件費の高騰を見越したコスト管理、さらには行政やサッカーに関心のない市民の共感といった、さまざまなハードルをクリアすることが求められる。

 山形に関しては、すでにこれらの課題をある程度は乗り越えているわけで、新スタ建設が上手くいかないJクラブの関係者には参考になる話も少なくない。当WMで初めて明かされる証言もあるので、山形のファン・サポーターのみならず、スタジアム建設に関心がある他クラブの関係者にも、ぜひ最後までお読みいただきたい。(取材日:2024817日@天童市)

屋根を3面にした理由は「コスト削減」だけ?

──相田さん、鈴木さん、今日はよろしくお願いします。88日に新スタジアムについての説明会がありました。山形以外のサポーターの反応も多かったのですが「素晴らしいスタジアムができそう」というポジティブな意見と「ビジター席に屋根がなくてどうなの?」というネガティブな反応が両方あって興味深かったです。この件、認識されていましたか?

相田 はい、認識しています。ビジター席に屋根がないのは、「アウェイの洗礼」というのが目的ではありません。このデザインになったのは(Jリーグが定める)ルールに則ったものであり、われわれが準備できる予算の中で考えた上で、出てきたものになっています。

──建設費は158億円と報じられました。5年前だったら、おそらく100億前後で済んでいたと思うんですが。

相田 コロナ明けのタイミングで、円安の影響や資材費、人件費も高騰しています。われわれもゼネコンさんとコストの件で、何度も意見交換をしてきました。ある会社からは「これ、今すぐ造る必要ありますか?」と聞かれたので、少し待てばコストが下がるのかと聞いてみると「これ以上、下がることはないです」とはっきり言われました。

──ビジター側に屋根を付けなかったのは、コスト削減が理由だったのでしょうか?

相田 それもありますし、南側を開けることでの芝生の養生という目的もあります。もちろん、あのデザイン案は最終形ではなく、ここからいろいろ微調整は出てくると思います。それでも、コストのことは考えなければなりません。たとえば屋根を2メートルせり出すだけで、約20億かかります。しかも雪国のため、鉄骨の量も多くなります。

──今年オープンした、エディオンピースウイング広島(Eピース)の建設費が2569600万円。この秋にできる長崎スタジアムシティが900億円から1000億円と言われています。もっとも長崎の場合、アリーナやホテルやオフィスビルも含まれていますが。いずれにせよ、この時代に15000人収容のスタジアムを作るとなれば、158億円という金額はかなり頑張ったといえるでしょうね。

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