夏場のオフも楽しめる「可変的スタジアム」とは? モンテディオ山形が推し進める「生存戦略」<2/3>
■日本の新スタは「MLSスタイル」を目指すのがトレンド?
──山形の新スタジアムについては、どうしてもビジター席のことばかりが話題になっていますが、もう少し俯瞰的な視点から質問させてください。新スタジアムについては、当初「ドーム型」という説がありました。ところが実際の完成予想図は3面屋根付きのスタジアム。この間にどういうプロセスがあったのでしょうか?
相田 私が社長に就任する前(2019年以前)、半分ドームで囲われたようなパースが出ました。その時も、真剣にさまざま議論されたようです。たとえば札幌ドームが参考にした、オランダのフィテッセにあるヘルレドームはご存じですか?
──20世紀末からあるスタジアムでしょうか?
相田 オープンは1998年ですね。建設費が9500万ユーロだったそうです。当時のレートが1ユーロ120円として、114億円。コロナ禍以前だったら、もしかするとドーム型でも今回の総工費と同じくらいの価格で作れたかもしれません。
──今だったら倍以上はかかるでしょうね。ただし雪国のスタジアムだからといって、必ずしもドームである必要はないようにも感じると思うのですが、その点はいかがでしょう?
相田 札幌ドームは、ピッチを動かすのに1回120万円くらいかかるそうです。往復だと240万円。外にピッチを出した時に雪が降れば、雪かきも必要になります。そうなると、山形でドームにするメリットはあまりないと感じるようになりました。
──確かに。その後、相田さんはアメリカMLSのスタジアムを視察していますが、現地でもドーム型はそれほど多くはないみたいですね。
相田 去年、ニューヨーク、ミネソタ、デンバー、ロサンゼルスのスタジアムを視察してきました。ロサンゼルス以外はいずれも雪が降る地域で、ミネソタだと2メートル近く積もります。ただ、アメリカのスポーツ観戦文化として、彼らは雪が降っていてもスキーウェアなどの防寒対策をして、NFLを観に行くんですよね。現地の人たちからも「なぜコストメリットのないドームをわざわざ造ろうとするんだ?」と言われました。
──むしろMLSでは、3面屋根の「コの字型」のスタジアムが多いですよね?
相田 4面が屋根に覆われたものもありますし、南側のスタンドに屋根がない「コの字型」もありました。向こうでも芝生の養生が悩みの種で、屋根を太陽光の透過性が高い素材に変えたり、より日光を取り入れて風通しもよくするために屋根を外したりしていましたね。お話を聞いて回っていると、実は「コの字型」の屋根掛けスタンドが一番理にかなっていると。そういった部分は、われわれも非常に参考にさせていただいています。
──最後はどうしても、屋根なしビジター席の話になってしまいますね(笑)。そういえば、今年オープンしたEピースも、MLSのスタジアムを参考にしています。日本のスタジアムのトレンドは、欧州ではなくアメリカに向かいつつあるのでしょうか。
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