混沌J2の今後を展望するLIVE(J論)【4/10(木)21時】

宇都宮徹壱ウェブマガジン

53歳で迎えた「人生第3の転機」に考えたこと ロング・アフターワード(長いあとがき)<1/8>

「うーん。この分だと、あとがきは2ページで収めていただく感じになりそうですね」

 書籍編集者のOさんが、申し訳無さそうな表情を浮かべながら、そう語る。そうか、2ページか……。できれば、今回は4ページほしいところなのだが。

 今年12月に発売予定となる、14冊目となる私の新著。原稿については、プロローグからエピローグまで、あとがきを除いてすべて書き終えている。ここから先は、一冊の書籍に仕上げるまでの具体的なやりとりがつづく。

 そんな中、横浜駅近くのWIRED CAFÉOさんと打ち合わせている中、出てきたのが「あとがきのページ数問題」。Oさんいわく、総ページ数は動かせないという。

 書籍の本編の末尾に割かれた、あとがき。皆さんは読者として、この最後のパートをどう捉えているだろうか。映画ファンがエンドロールで席を立たないのと同じで、あとがきを「絶対に読まない」という人は極めて少数派であろう。書籍ができた経緯や完成までの苦労話、そして編集者や取材対象者、さらには執筆に協力してくれた人たちや家族への感謝の言葉。そこには、メインディッシュの余韻を愉しむ、デザートのような味わいがある。 

 書き手にとっても、あとがきは重要だ。たいていの場合は本編を脱稿後、カバーデザインやら帯やらを決め込んでいるさなかに書かれることが多い。いったん原稿を突き放した状態なので、取材や執筆時のあれこれを思い出しながら、俯瞰的に筆を進めることになる。もしかしたら「面倒くさい」と思う人もいるかもしれないが、私はあとがきを書くのは大好きだし、ある種のカタルシスさえ覚えるタイプである。 

 で、冒頭の編集者の言葉である。

 これまで出してきた13冊の書籍のあとがきは、たいてい2ページで済んでいた。1ページ目で作品が完成するまでの艱難辛苦を振り返り、2ページ目で謝辞をまとめるというのがこれまでのパターンであった。ところが私の最新作は、この本のためのインタビュー対象だけで35人もいる。他にも製作でお世話になった方々がいるので、今回はどうしても4ページを確保したい。

 あとがきが4ページになるか、2ページになるか、現時点ではまだ決定していない。が、この最新作については、企画段階から現在に至るまで、さまざまなエピソードが盛りだくさん。おそらく4万字から5万字くらいの読みものが成立するだろう。これを埋もれさせるのは、非常に勿体無い。記憶が鮮明なうちに形に残そうと思い、当WMでの連載企画とすることを思い立った次第だ。

 書籍が作られるプロセスというものは、普段あまり可視化されることはないと思う。

 取材対象にインタビューして、それを原稿に落とし込めば終わり、という話ではない。版元からゴーサインを貰えるまで、あるいは脱稿してから書籍を売り出すまで、さまざまなプロセスでささやかなドラマがある。

 もっとも当企画は当初、隠密で進めていたところもあったため、ずっとSNSで発信することを控えてきた。それでも当WMの会員の皆さんには、いずれきちんとお伝えしなければ、と思っていたのである。その使命感は、何に起因しているのか?

 それについては、本稿の最後に明らかにすることにしたい。

(残り 3836文字/全文: 5143文字)

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