【無料公開】「国立開催」と「無料招待」の狙いとは? 空前のプロモーションについてJリーグに訊く<2/3>
■招待券はデジタルマーケティング的には「ばら撒き」にあらず
──今回の1万人ご招待について、ひとつ気になっていたのが「これってタダ券配りだよね?」ということでした。つまりJリーグが持っている価値というものを毀損しかねるのではないかという議論が、Jリーグ内部でもあったのではないかと思ったのですが、いかがでしょうか?
笹田 もちろん頻繁にやるものではないですし、クラブの皆様とは任意でやらせていただいております。つまりリーグ側からの強制ではない、ということですね。どのクラブにチケットを何枚提供するのかについても、基本的にクラブとの合意の上で慎重に進めていますので、希望しないクラブも当然あります。
それと無料チケットの考え方自体、デジタルマーケティングの時代になって変わってきています。タダ券をお配りすることでIDを獲得して、もう一度来ていただけるような仕組みづくりができていれば、それはサンプリングという考え方も可能になるわけです。ちなみに初回が招待と購入とでは、リピート率は約8ポイントの違いはあるんですが、このリバイバルのタイミングでは、まず来ていただくことに重きを置こうという考え方になりました。
──つまりJリーグIDを新たに登録することで「次はこの試合がありますよ」という誘い方ができるわけですよね? 私もIDは持っていたので、今回の取材のために国立の招待チケットを申し込んでみたら、やたらとFC東京のホームゲームのお誘いメールが来るようになりました(笑)。
丸山 補足しますと、JリーグIDでチケットを取得していただくと、お気に入り登録したクラブからさまざまな情報を得ることができます。たとえば、最初のご来場から次の観戦までに、どれくらい間が空いているかを見て次の打ち手を考えられるわけです。招待券・優待券とJリーグIDをセットに有効なCRM(顧客管理)ができるというのが、リーグとクラブの共通認識になっています。
それから国立以外の招待チケットについてですが、Jリーグの特設ページをご覧いただきますと、さまざまな切り口からカードを選ぶことができます。カード、地域、日程、そしてJ1でしたら有名選手を前面に押し出すとか。そこあたりは、クラブと相談しながら決めていきました。
──(サイトを確認しながら)この「はじめての観戦ガイド」というのもいいですね!
丸山 観戦ビギナーから「Jリーグは観に行きたいけど、スタンドでどう振る舞えばいいのかわからない」とか「ゆっくり座って観戦できる席はあるのか」といったご意見をいただくことがあります。ですので、座席の選び方から持ち物、感染予防対策、そしてスタジアムグルメやマスコット。Jリーグがこれまで積み重ねてきたものを、しっかり作り込んで反映させました(笑)。
──先ほど勝澤さんがおっしゃっていた「CMからネットで検索して公式サイトにアクセスする」というのは、まさにこのページにまで来ていただくのが目的だったんですね。それにしても、JリーグのCMって、最近ではちょっと記憶にありません。2004年にtotoのCMがあったのは覚えていますが。
勝澤 私が知る限り、JリーグとしてのCMは2010年以降、打ってないですね。それまでもローカルでのCMはありましたが、関東中心にこれだけ大規模なCMを打ったのは、初めてだったと認識しています。