宇都宮徹壱ウェブマガジン

【無料公開】「国立開催」と「無料招待」の狙いとは? 空前のプロモーションについてJリーグに訊く<1/3>

「もう一度、Jリーグを見ていただくためにチャレンジしよう」

──GWまでの集客について、Jリーグの認識はどのようなものだったのでしょうか?

丸山 昨年(2021年)の秋以降、ワクチン検査パッケージをはじめとする政府のガイドラインに沿いながら、各クラブはキャパを少しずつ積み上げてきました。それでも今季の開幕以降で1万人の壁を超えるのはなかなか難しいし、これが2万人となるとかなり先になるだろうと。かつてはJ1の平均が2万人を越えて「イレブンミリオン(1100万人)」を達成したシーズンもあったんですが。

──コロナ前の2019年ですね?

丸山 そうです。あの時代に戻るには、並大抵のことでは厳しいというのは、われわれの議論の中でも多々ありました。ならばどうするか。まずは週末レジャーの選択肢に思い出してもらうためにもTVCMを流すことで「Jリーグ、やってます」という空気感を作りながら、招待キャンペーンを展開することを考えました。それもクラブ単体よりは、リーグで横断的に展開することで最大化できるのではないか。それで24000席分のチケットを確保して、大型キャンペーンを組むことにしました。

──24000席というのは、429日だけではないということですか?

丸山 429日の国立が1万席。それ以外のカードでも1試合平均1000席程のチケットを確保していて、そのトータルが24000席ということです。

──なるほど。それにしても、GWに向けて大々的に打って出ようというプランは、いつ頃からスタートしたんでしょうか?

笹田 昨年の末くらいから、こういった話をしていましたね。やはりコロナでこの2年間、各クラブもJリーグも、集客にかなり苦戦を強いられてきました。そうした中、Jリーグではリバイバル期に備えた予算措置がされていて、政府の制限がなくなったタイミングでゴーサインを出していただいたというところです。

──ちょうどチェアマンや理事が代わり、組織変更も行われる中でのプロジェクトだったわけですが、そのあたりの影響についてはいかがでしょうか?

笹田 確かに組織変更はありましたが、新しい経営陣の中でもマスメディアを活用したプロモーションの必要性を感じていただきながら、進めていくことができました。

勝澤 前チェアマンの村井さんは「もう一度、Jリーグを見ていただくためにチャレンジしよう」ということを盛んに口にされていました。そして現チェアマンの野々村も「Jリーグという作品は、たくさんのお客様に観ていただくことが重要」という思いがとても強いです。ですからトップの認識に、まったくズレはなかったですね。

 それと笹田の話に追加させていただきますと、マーケティング担当者会議というものを、全Jクラブの担当者の方々と定期的に続けているんですが、やはりどのクラブも集客に大変苦労されているんですよね。「もう一度、Jリーグを見ていただくためにチャレンジ」というのは、Jリーグからの掛け声だけでなく、各クラブからの切実な声があったことも申し添えておきたいと思います。

──先ほど「イレブンミリオン」の話もありましたが、鬼武(健二)チェアマン時代は明らかにJリーグが主で各クラブが従という構図だったと理解しています。あの時と比べて今回は、リーグとクラブの危機意識がしっかり共有されていて、同じベクトルに向いているというのが画期的ですよね。

勝澤 それについては、コロナ対応の中で、すべての会議がオンライン化したことで、リーグとクラブとのコミュニケーションは逆に密になった部分もあると感じています。コロナ以前でしたら、全国からJFAハウスに来ていただいていたので、それほど頻繁に会議もできませんでした。そこの部分については、まさに怪我の功名の部分だったかなと思っています。

2/3>につづく(63012時更新予定)

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