2023年のハフカテ監督人事事情 上野展裕(福山シティFC監督)
今週はハフカテ(ハーフウェイ・カテゴリー)ウィーク。日本サッカーのピラミッドの中腹(ハーフウェイ)に位置するカテゴリーで、今季から指揮を執る2人の指導者にフォーカスする。増嶋竜也監督(SHIBUYA CITY FC=東京都1部)につづいて登場するのは、今季から福山シティFC(中国リーグ)を指揮することとなった、上野展裕監督である。
上野さんは1965年生まれで滋賀県出身。早稲田大学卒業後、全日空とマツダSC(のちのサンフレッチェ広島)でプレーし、1994年に現役を退いている。その後は指導者の道に進み、初めて監督となったのが2009年。当時、北信越リーグ1部に所属していたツエーゲン金沢を、わずか1年でJFL昇格に導いている。
その後は、アルビレックス新潟(代行)、レノファ山口FC、ヴァンフォーレ甲府、ヴィアティン三重、鹿児島ユナイテッドFCで指揮を執り、今季は12年ぶりに地域リーグの舞台に戻ってきた。J1から地域リーグまで、これほど広範囲のカテゴリーで監督経験があるのは、上野さん以外にはそう多くはないはずだ。
一方の福山といえば、小谷野拓夢前監督が25歳の若さでガイナーレ鳥取の強化育成部長に転身。後任は誰になるのかと思っていたら、前監督の「お父さん世代」に当たる上野さんを迎えることとなった。今回の監督人事には、どのような背景があったのか。さっそく、ご本人に語っていただこう。(2023年1月27日、オンラインで取材)
<目次>
*福山シティFCに決めた一番の理由とは?
*あと1勝で「三重のサッカー史が変わった」
*1960年代生まれの監督が少なくなる中で
※Zoom以外の写真は福山シティFC提供
■福山シティFCに決めた一番の理由とは?
──今日はよろしくお願いします。新体制発表会の動画を拝見したんですが、昨年以上にメディアの数が増えていて驚きました。実際のところ、どんな雰囲気だったのでしょうか?
上野 ある意味、Jリーグのクラブ以上のメディアの数でしたね。すごく注目されているんだなと思いました。そのあと記者さんから質問を受けたのですが、今季の目標やチーム作り、なぜ福山に来たのかという質問が多かったですね。あと、なぜか森保(一)監督のことを聞かれました(笑)。
──鹿児島の監督を退任されたのが、2021年の12月。それから福山の監督に就任するまで、どう過ごされていたんでしょうか?
上野 ずっとサッカーを観ていました。朝から晩まで、日本だけではなくて、海外のサッカーも。家族は広島なんですけど、実家がある滋賀に戻ることも多くて、母校の高校生を指導したり、インターハイを観たりもしていましたね。良く言えば「充電期間」ですが、悪く言えばフラフラしていた(笑)。ただ、サッカー見放題の日々だったのは間違いないです。
──上野さんといえば、常にどこかで監督をされているイメージがあったのですが、これほどの充電期間というのは初めてだったのでしょうか?
上野 いえ、レノファ山口をシーズン途中で離れることになって、吉田達磨さんの後任で甲府の監督になった時以来ですね(編集部註:2017年5月~18年4月)。あの時もそうでしたが、海外での監督とかJクラブのヘッドコーチとか、そういうオファーはあったんです。でも、海外ですと忘れられるリスクもありますし、やっぱりコーチではなく監督をやりたかった。そういうわけで、今回も充電期間に充てることにしました。
──広島時代のチームメイトだった、森保さんのことを会見で聞かれたとのことですが、去年のワールドカップはどんな思いでご覧になっていたのでしょうか?
上野 もう、いちファンとして応援していましたよね。祈るような思いで「勝ってくれ!」と。さすがにドイツとスペイン、両方に勝てるとは予想できませんでした。それでも前半と後半で、まったく違った戦い方をするのは、森保さんが広島の監督時代にもよくやっていたんですよね。まさに、彼のいい面が出たと思います。私がこんなことを言うのもおこがましいですが(笑)。
──日本中がワールドカップで盛り上がっていた、昨年12月に監督就任のオファーがあったわけですが、福山シティFCの存在はご存じだったのでしょうか?
上野 もちろん知っていました。天皇杯での躍進は記憶に新しいところですし、広島県外でも注目されているクラブだと認識していました。
──地域リーグというカテゴリーのクラブだったわけですが、オファーをもらったときの率直な感想はいかがでしたか?
上野 自分の中で、カテゴリーそのものへのこだわりは、あまりなかったですね。ただ、受けるかどうかを決めるにあたり、代表の岡本(佳大)さんとは何度も話しました。決め手となったのは「目指すサッカーが同じ」だったから。そこで意気投合できたのが、福山に決めた一番の理由でした。
──福山シティのサッカーは「攻守にわたって自分たちが主導権を握る」ですが、それがまさに上野さんが目指すサッカーと一致していたわけですね?
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