なぜ中村慎太郎はクラファンで本を作るのか? OWL magazineの新たな挑戦を当事者に訊く
8月25日、興味深いクラウドファンディングがSNSのサッカー界隈で、ちょっとした話題となった。「サッカー旅の本をサポーターの力で作る!!」と銘打ち、目標金額50万円を27時間で達成。本稿執筆時で67万9000円に達し、最終日の9月23日には100万円を超えるのも決して不可能ではあるまい。
「こんなに速く、達成できるとは思っていなかったですね。本当に感謝の気持ちしかありません。目標金額については、もう少し高く設定する選択肢もありました。ただし「十分達成可能な金額のほうがいいですよ』というアドバイスをいただいていたのもあります(笑)」
そう語るのは、このクラファンを立ち上げたOWL magazine代表、中村慎太郎さんである。今月より株式会社西葛西出版の代表取締役に就任。私はこの人を、作家デビューした当初からウォッチしている(最初のロングインタビューさせていただいたのも私だ)。その後、書店員になり、OWL magazineを立ち上げ、さらにタクシードライバーに転身。定点観測していて、これほど変化の激しい人物を私は知らない。
そんな中村さんが、とうとう出版社を起業して、さらにクラファンで最初の書籍を世に送り出そうとしている。ここはやはり、私が最初のインタビュアーになるしかないだろう。今回は中村さんに加えて、出版社として最初の書籍となる『〝サッカー旅〟を食べ尽くせ! すたすたぐるぐる 埼玉編』の編集を担当している、グラサポの矢島かよさんにもお話を伺った。
まずはクラファンでの手応えについて。前述のとおり、今回はさくっと目標の50万円を達成することができた。しかしながら「最終的な目標は150万円です!」と鼻息荒い中村さん。その理由は実にシンプルなものであった。
「それだけ集められれば、750部を刷ることができます。クラファンをやっていなかったら、その倍くらい売らないと採算が取れないんですよ。クラファンのいいところは、採算が取れるところまでお金を集めて、そこから印刷に回せること。実は、もうひとついいところがあって、クラファン自体が広告なんですよね。期間が1カ月あれば、その間にお金を集めながら宣伝もできるわけですから」
それでは出版業界出身の矢島さんは、クラファンによる書籍企画というものを、どう考えているのだろうか。「書籍を作る仕事を20年くらいやってきました」という彼女の回答は、私の想像をはるかに超えてポジティブなものであった。
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