「昇格も降格もない」Jクラブの存在意義 J3・福島ユナイテッドFCの場合<2/2>
<2/2>目次
*「野菜を育てるし、選手も育てる」福島ユナイテッド
*もしも福島ユナイテッドといわきFCが合併したら?
*マスコットの福嶋火之助にツエーゲン金沢の影響が
■「野菜を育てるし、選手も育てる」福島ユナイテッド
──東北には現在、6県すべてにJクラブがあります。そのうちJ1経験がある、ベガルタ仙台とモンテディオ山形が図抜けていて、その他4県のクラブがJ3という構図がずっと続いてきました。ところが昨年、ブラウブリッツ秋田がJ3を無敗優勝して、今季からJ2です。福島ユナイテッドのGMとして、刺激を受けたのでは?
竹鼻 秋田の岩瀬(浩介)社長とは、仲良くさせていただいています。仙台出身の僕が福島で仕事をしているように、彼も秋田ではなく茨城の出身。同じ余所者同士ですが、岩瀬社長のパワーと打開力には、本当にすごいなと思っています。ただし秋田と福島とで考えると、やはり秋田のほうに地域的なアドバンテージがある、というのが正直なところです。
繰り返しになりますが、福島は3つの地域に分かれていて、4つの大きな都市があります。それに対して秋田は、秋田市だけですよね。ですから、まとまって県から応援されやすい。それと秋田は「スポーツ立県」を謳っていて、もともとバスケットやラグビーが盛んな地域です。施設もあるし、行政の理解も得やすい土壌がありますよね。
──福島って、そんなにスポーツが盛んというではないんですか?
竹鼻 盛んとはいい難いですね。理由のひとつには、やはり地域が分かれていて、施設が分散しているというのも、少なからず影響していると思います。
──結局、話はそこに戻っていくわけですね。福島の場合、当面の間は昇格しない形で持続可能なクラブを目指しているように感じられるのですが。
竹鼻 そうです。単純な話、スタジアムの問題というのは、クラブ単体で何とかできる話ではないですよね。それにわれわれは、常に被災された方々のことを考えなければなりません。その一方で、この間の西部サッカー場での試合を見ていて「やっぱり専用スタジアムはいいな」って思いました。
将来、もし新スタジアムを作るということになるのであれば、あの近さやコンパクトさというものは目指したい。それは「昇格のため」ではなく、エンターテイメント性重視という意味で。ただし現実問題として、徹壱さんがおっしゃるとおり、われわれは「当面、J2には上がれない」という前提でクラブ作りをしていく必要があります。
──鳥取時代は、鳥取市にバードスタジアムがあったので、がむしゃらにJ2を目指すという姿勢だったわけですけれど、福島ではまったく違った発想が必要になると。
竹鼻 そういうことです。幸い福島の皆さんも、現状では昇格できないことを理解していますし、われわれとしても「絶対昇格!」ではないところでのチャレンジというものは、いくらでもできるのではないかと考えています。クラブにとって何が一番大切なのかといえば、カテゴリーを上げることよりも、地域の人たちから「ユナイテッドがあってよかった」と思ってもらえるかだと思うんです。そう思っていただける人を、どれだけ増やしていけるのか。それが現時点で、僕らが考えるべき最大のテーマだと思っています。
(残り 3572文字/全文: 4973文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ