宇都宮徹壱ウェブマガジン

Jリーグマスコット総選挙は今後も続けるべきか? いつもと違う2021年のゼロックス杯に寄せて

 いよいよ今週末から開幕する2021年のJリーグ。本気で優勝を狙っているサポも、降格への危機感を抱いているサポも、等しくこの日を待ち望んでいることだろう。そんな晴れがましい開幕を迎える前に、あらためて2月20日に埼玉スタジアムで開催されたFUJI XEROX SUPER CUP(以下、ゼロックス杯)について振り返っておきたい。とはいえ、川崎フロンターレとガンバ大阪による試合については、すでにレビュー記事は出尽くしている。本稿では「2021年シーズンのプレビュー」という視点から、大会を振り返ることにしたい。

 今回のゼロックス杯は、緊急事態宣言の延長に鑑み、入場者数を5000人以下に設定。ファンの観戦プロトコルも、そのまま踏襲されることとなった。ピッチ上でのルールも同様。今年も5人交代制で、前後半2回の飲水タイムも同じ。その一方で、昨シーズンの開幕戦以降は導入が断念されたVARが発動され、終了間際には脳震盪の疑いでベンチに下がった選手に代わって、6人目の交代選手が新ルールによって認められた。結果として今回のゼロックス杯は、新シーズンのよきデモンストレーションとなったといえよう。

 しかしながら「単体」としてのゼロックス杯を見た時、今年はスタジアムグルメもマスコット大集合もない、実に寂しい大会となってしまった。新シーズンの開幕を告げるゼロックス杯において、スタグルもマスコットも不可欠なものとなっているのは周知のとおり。もっとも、それらが大会に彩りを加えるようになるのは、意外と最近の話だったりする。スタグルは2010年で、マスコットは12年(総選挙は13年)から。それ以前のゼロックス杯は、リーグチャンピオンとカップウィナーによる、純粋に試合オリエンテッドの大会だったのである。

 さて、タイトルの「マスコット」に惹かれて、本稿を読んでいる人も多いだろう。だが、その前提としてのゼロックス杯について、もう少し述べておきたい。「スーパーカップ」という形式は、1908年に始まったイングランドのFAコミュニティ・シールドを除けば、実はそれほど歴史が古いわけではない。フランスでは1955年にスタートしたが、80年代から90年代にかけて10年のブランクがある。イタリアやスペイン、ドイツといったフットボール大国でも、始まったのは1980年代以降の話だ(ちなみにドイツでも長い中断期間があった)。

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