宇都宮徹壱ウェブマガジン

再びGoToキャンペーンと「遠征自粛」を考える 制限延長を決断したJリーグの判断をどう見るか

 週明けの月曜日、たまたま点けた午前のワイドショーに、とんでもないものが映し出されていた。迷惑系YouTuber(という名称をこの時初めて知った)の「へずまりゅう」である。スーパーで魚を盗み、現在は「容疑者」となっているこの男。番組が問題視したのは、自身が新型コロナに感染しているにもかかわらず、山口県を観光していたことだ(しかもマスクをつけず、飲み屋で飛沫を飛ばしまくっていた)。実際に感染者も出ており、山口県知事も名指しで激怒したとのこと。醜悪な映像だったが、見ておいてよかったとも思う。

 なぜか。傍若無人なYouTuberの姿は、「地方で暮らす人たちが首都圏から押し寄せる旅行者に抱くイメージ」というものを、デフォルメした形ながらも具現化していたからだ。それと紐付いて想起されたのが、ネット上で盛んに議論されてきたGoToトラベルキャンペーン。観光業に携わる人たちにとって、それは慈雨のごとく待ち望んだものであった。だが、そうでない人たちにしてみれば、連日200人台の感染者を出している東京都民の来訪は、およそ受け入れがたいものであろう(今回のキャンペーンで、東京が除外されたのも当然の判断であった)。

 同じ日、Jリーグは臨時の実行委員会を開き、8月1日から予定していた試合会場の観客数の制限緩和を見送ると発表。8月10日までは、観客数の上限5000人とビジター席の閉鎖を続けることを明らかにした。先週のコラムで私は《引き続き政府の方針に従うのか、それとも国民感情を尊重するのか。Jリーグの理性的な判断を期待したいところだ。》と結んでいる(参照)。結果としてJリーグは、政府の方針が発表される前に、自分たちの方針を表明。私の懸念は、結局のところ杞憂でしかなかった。

 この日、リモートによる会見に臨んだ村井満チェアマンは、専門家とも意見交換したことを明かしている。そして「まだ政府の(最新の)見解が出ていませんが」とした上で、「現在の数字が引き続いていく可能性が十分に高いとか、国民の感覚や感情が非常に慎重になってきているというのは(決定の背景として)ありました」と語っている。GoToキャンペーンへの国民的な理解が得られず、右往左往している政府に比べると、Jリーグの(そして村井チェアマンの)決断は実に際立ったものに感じられる。

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