宇都宮徹壱ウェブマガジン

Jリーグ再開の祝賀ムードに取り残されて 首都圏での取材が困難なフリーランス事情

 J2が再開され、J3が開幕した6月27日。私は、東京ヴェルディ対FC町田ゼルビアのゲームが行われる、味の素スタジアムの近くでキックオフの瞬間を迎えていた。記者席で、ではなく、スタジアムの近くで。同日行われた別カードの取材申請が「却下」となり、だったら自宅から最も近い味スタを眺めながら、Jリーグ再開の空気感を味わおうと思い立ったのである。似たようなことを考えているファンもいるのかなと思ったが、味スタの正門付近を行き交う人の数はまばらで、柵の隙間から試合を覗き込もうとする輩も皆無であった。

 リモートマッチでは、特にスタジアムDJが入るわけでもないし、BGMが流れてくるわけでもない(少なくとも味スタでは)。その代わり、サポーターのコールやチャントを録音したものがうっすらと聞こえた。最初はスタジアムの外側で、ヴェルディのサポーターが集まって声出ししているのかと思ったが、そこまでの逸脱者はいなかったようだ。プロ野球開幕の際に報じられた、一部ファンによる「無観客の理由を理解していない行為」が、サッカーファンの反面教師となったのは間違いないだろう。

 Jリーグ再開。それ自体は、この国でサッカーに関わるすべての人々にとって、無条件で喜ばしいことである。この日を迎えるために、JリーグとJクラブ関係者、さらにはあらゆるステークホルダーが、どれだけの苦労を強いられてきたか。そのことについては私自身も、これまでの取材を通して十分に認識しているつもりだ。しかしながら、この祝賀ムードに、どうしても乗っかることができない自分がいる。私だけではなく、取材申請を「却下」された同業者もまた、濃淡の差こそあれ同様の思いを抱いていることだろう。

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