宇都宮徹壱ウェブマガジン

「感染者ゼロ」で3月場所を乗り切った大相撲に学ぶ Jリーグも参考になる?「無観客」開催での成功事例

 世界的なコロナ禍が続く中、わずかずつであるがスポーツの灯火が戻りつつある。フットボールに関して言えば、先週末の韓国のKリーグが開幕し、今週末にはドイツのブンデスリーガも再開される。いずれも無観客での開催だが、それでも大きな前進といえよう。そんな中、Jリーグは5月11日にオンラインによる会見を実施。村井満チェアマンは、公式戦再開に向けた見通しは依然として立たないとしながらも、無観客試合については「現実的になってきた」と暗に認める発言をしている。

 これまでJリーグは(そして村井チェアマン自身が)、無観客試合は「最終手段」と位置づけていた。それは「Jリーグはファン・サポーターの皆さんと共に」というテーゼももちろんあるが、いわゆる「JAPANESE ONLY事件」に端を発する2014年の無観客試合も少なからず影響していたはずだ。あの6年前の出来事がトラウマとなり、「無観客試合=重大なペナルティ」というイメージが、Jリーグにおいて無意識下に共有されている節が見られる。それでも、事ここに至っては「無観客試合もやむなし」と肚を決めつつあるようだ。

 いずれにせよ再開後のJリーグは、まず無観客試合から始まることが濃厚。そのために、今はKリーグやブンデスリーガの情報を収集、精査しているはずだ。その重要性については論を俟たないが、国内における無観客の成功事例についても、そろそろ目を向けてよいのではないか。すなわち、大相撲の3月場所である。もちろんサッカーと相撲を、安易に比較すべきではないだろう。それでもサッカー以上に3密のリスクがある中、朝8時から夕方6時までの取り組みを15日連続で行い、感染者をゼロに押さえたという事実を過小評価すべきではない。

 果たして日本相撲協会は、どのようにして無観客の3月場所を無事に乗り切ることができたのだろうか。今回は『スー女のみかた 相撲ってなんて面白い!!』の著者であり、週刊女性PRIMEでも「スー女のミカタ」を連載中の和田さんに「相撲ファンが考える無観客試合」についてお話を伺った。なお、和田さんは現在、Instagram上で「相撲絵師たち展@ステイホーム」を開催中。こちらも併せて、ご覧いただければ幸いである。

 編集部より:5月13日、日本相撲協会から高田川部屋所属で西三段目の勝武士さんがコロナウイルス性肺炎による多臓器不全のため、東京都内の病院で死去したと発表されました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

 

相撲絵師たち展@ステイホーム

──このほど、5月場所の中止が発表されました。力士や親方に感染者が出たこと、そして緊急事態宣言が延長されたことを受けての決定ということで、やむを得ない判断だったと思います。これまで大相撲の長い歴史で中止となったのは、終戦直後の1946年、そして八百長スキャンダルのあった2011年の2回のみ。今回、初めて知ったのですが、実は戦争中も大相撲は行われていたんですね。

和田 行われていたんですよ。当時の軍部が、国威発揚のために開催させていたんです。ですから中止は今回が3回目となりますね。ちなみに大相撲が中止になった年は、いずれも大地震が起こっているんですよ。11年の東日本大震災は記憶に新しいですが、46年にも(昭和南海地震が)起こっているんです。たまたまだとは思うんですが。

──最近も関東で地震が頻発しているから、ちょっと心配ですね。

和田 11年の時も震災前に中止が決定していましたが、実は「土俵入りだけでもやっておくべきだった」と主張する人もいた、なんて話を聞いたことがあります。相撲は興行であると同時に神事としての側面もあって、土俵入りは「邪気祓い」の意味合いもありますからね。

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