宇都宮徹壱ウェブマガジン

漫画家 能田達規が力説する、なでしこリーグの魅力とは?

【無料動画】漫画家 能田達規が描く、なでしこリーグの世界観

 今週は史上初の日本女子サッカーリーグマンガ『レディース!』を連載中の能田達規さんに、ご登場いただいている。無料動画に続いて、今回はテキストによる会員限定のインタビューをお届けすることにしたい(この機会に会員登録をお考えの方はこちらへ)。

 「フットボールがない週末」が続く中、私たちの飢餓感を満たしてくれるのがサッカーマンガ。『キャプテン翼』や『GIANT KILLING』が、今般のコロナ禍を契機に無料で読めるようになったことは広く知られているが、私自身はリアルタイムで連載中の『レディース!』に非常に勇気づけられている。東京五輪は中止になり、なでしこリーグは開催の見通しが立たない今、だからこそ『レディース!』が読めることの意義は大きい。

 その一方で、女子サッカーリーグという未開拓のジャンルに挑戦した、能田さんの勇気に心からの拍手を送りたい。このテキストによるインタビューでは、なでしこリーグの持つ魅力について、能田さんと編集者の川合梅子さんに大いに語っていただいた。最後までお読みいただければ幸いである。(収録日:2020年3月26日@東京)

<目次>

*女子サッカーマンガに必然だった女性編集者

*娘が「大学進学をやめて愛媛に行く」選択をしたら

*単純に「カッコいい女性が戦っている姿は美しい」

女子サッカーマンガに必然だった女性編集者

──『レディース!』の連載は順調に進んでいますが、能田先生の周りではどんな感想が聞こえてくるんでしょうか?

能田 愛媛FCレディースのサポーターは、すごく喜んでくれていますね。

──では、ここまでの読者の反響というものはいかがでしょうか?

川合 女子サッカーリーグを舞台にした作品ということで、どんな方が読んでくれるのかなというのはあったんですね。ただネットでの配信ですので、どこにお住まいの方が読んでいるのか、ある程度は追えるんですよ。やっぱり、愛媛からのアクセスが多いですね。

──なるほど。編集者としての立場を離れて、女性の視点から読んでみての感想はいかがでしょうか?

川合 実は私、男性の漫画家さんを担当したことがなくて、しかもスポーツものは一切やっていなかったんですよ。ただ、能田先生の作品は大好きでしたので、女性向けの作品を担当してきたエッセンスを加えるとどうなるのか、という実験的な部分はありますね。

能田 もともとこの企画は、別の編集部の男性編集者と一緒に立ち上げたんですね。でも女子サッカーの漫画ですから、結果的に女性担当者になって助かっています。というのも、女性目線で見て「おかしいな」って思えるところを、梅子さんはちゃんと指摘してくれるので。

川合 要するに、女性同士での会話の部分ですよね。「女性の先輩にこんなこと言われたら、絶対に心が折れてしまいますよ」とか(笑)。

能田 塩川さんのセリフを「がらっぱちの姐御口調ですね」と言われました(笑)。いちおうクールビューティーという設定だったのに、なんか『ヤッターマン』のドロンジョさまみたいな喋り方になってしまうという。

──それ、ぜんぜんキャラ違うじゃないですか(笑)!

能田 喋り方だけでなくて、塩川さんに代表される今どきの女性の価値観とか、僕もよくわかっていなくて。たとえば塩川さんは、どんな車に乗るんだろうかとか。なでしこリーグの取材に行くと、すごくかっこいい車に乗っている人もいるんだけど、地方は軽自動車が多いとか。

──能田先生は多くのサッカー漫画を描いてきましたけれど、女子サッカーとなると表現方法も違ってくる感じってあります?

能田 男子の漫画だと、やっぱり体育会系で「勝つぞ、オー!」という感じですけど、女性の場合は必ずしもそうではないのかなと。たとえば去年、愛媛FCレディースが勝てた一番の理由って、選手全員の仲が良くて一体感があったからじゃないかなと思います。逆に勝てないチームというのは、揉め事や内紛があることが多いとか。女性同士が揉めると、男性の監督だと手に負えないんじゃないでしょうか。

川合 今度、ノジマステラの監督に就任する北野誠さんも、初めて女子を指導するので「一から勉強」みたいなことをおっしゃっていますね。

(残り 4482文字/全文: 6238文字)

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