宇都宮徹壱ウェブマガジン

わが平成史 写真とフットボールを巡って 初めての受賞と個人メディアへの道(平成22年/2010年)

 平成に代わる新元号のニュースは、自宅の書斎で原稿を執筆しながらNHKの特番をチェックしていた。11時40分に発表された「令和」については、個人的に思うところはいろいろあるものの、本筋とはあまり関係ない話題なのでここでは控える。いずれにせよ新元号が公表されたことで、いよいよもって平成は歴史の彼方へ移ろい始めることとなった。そして、平成時代の自分の仕事を振り返る当連載も、今回を含めて残り4回。ここからはいよいよ2010年代に突入する。

 平成の終焉ほどではないが、およそ穏やかではない心境で迎えることになった年が2010年、平成22年であった。この年に開催される、ワールドカップのホストカントリーは南アフリカ。歴代開催地の中で最も治安が悪いとされ、スタジアムを含むインフラ建設や大会運営が大いに不安視された国であった。そして2004年のFIFA総会で南アフリカ開催が決まると、同業者やサッカー仲間のほとんどは「まいったなあ」という思いで一致した。

 ヨハネスブルクで外に出たら、とたんに強盗にホールドアップされるのではないか? 撮影機材やPCを盗られるだけでなく、生命の危険さえあるのではないか? そもそもアフリカでワールドカップ開催なんて無理筋だから、直前になって開催地が変更になるのではないか? そんな噂が飛び交う中、迫りくる「2010年問題」を、私は折に触れて憂鬱に感じていた。しかし今にして思えば、この年ほど仕事上で実りの多かった年はなかったのも事実である。

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