「視聴者が解説者を選べる時代」だからこそ 戸田和幸(サッカー指導者・解説者)<4/4>
■「裏解説」につながる慶應ソッカー部での指導方法
──解説の仕事を続けていると、いろいろな現場で元Jリーガーや元監督といった同業の方々とお会いする機会が多いと思います。先ほど年功序列の話がありましたけれど、解説の世界でもそれは感じますか?
戸田 どうなんですかね。最初の頃はちょっと感じました。とはいえ昔と違って、これだけSNSが普及して、解説者が視聴者からフラットに評価される時代になりました。それを制作側は間違いなくチェックしているはずで、視聴者にウケが悪い人をわざわざ起用することはないでしょうね。その意味で、若干キャスティングは変わってきたかなと。
──ああ、それは確かに感じますね。製作側からすれば、コストをかけずに視聴者アンケートが取れるわけですから。
戸田 解説者って、年齢やキャリアがすべてではないですよね。長くやって来たから優秀なわけではなくて、どういう時間の過ごし方をしてきたのかで決まるものだと思います。それまで実績がなくても、ぽんと入って求められる結果を出せればOKなわけですから。指導者もまったく同じで、僕もB級、A級、そしてS級と受講してきて、それは強く感じていますね。常に勉強しなければ、あっという間に置いていかれてしまうというのは、解説者も指導者も同じだと思います。
──そんな中で戸田さんは去年、慶應義塾大学ソッカー部で1年間指導されていました。解説の仕事とはまた違った学びがあったと思いますが、いかがでしょうか?
戸田 「やっぱりサッカーって難しいな」っていうのが正直なところですね(笑)。勉強すればするほど、自分の頭の中でアイデアは出てくるし、知識が豊富になっているつもりにもなる。でも、実際にプレーするのは選手なんですよね。自分が提示したコンセプトに対して、それに必要な練習をしてきたつもりでも、実際にピッチ上で起こる現象にギャップが生じて「あれ?」って思うことは山ほどありました。
もちろん、選手のレベルやそれぞれの適正、そして対戦相手との力関係も考えながらゲームプランをしなければならない。それを完璧にやったつもりでも、やっぱり不測の事態がたくさん起こる。そこは勉強になりました。それとトレーニングでも、指導者の顔色ひとつ、声のかけ方ひとつで、選手の取り組み方ががらりと変わるんですよ。そういったリアルな現場に身を置いたことで、あらためて指導の重要性も理解できましたね。
──慶應でのトライについて、戸田さんはスポナビで連載を持っていました。そこの一節で印象的だったのが「解説で語る言葉と、指導で語る言葉は違う」というものでした。確かにそうだなと感じる一方で、指導現場でのサッカーの言語化が、解説の領域でも活かせる部分はあったのではないかと思いました。指導における「サッカーの言語化」については、戸田さんはどうお考えでしょうか?
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