今年のヨコハマ・フットボール映画祭が一味違う理由 福島成人(YFFF実行委員長)インタビュー<2/2>
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■イスラエル右派クラブの差別とアフリカの多様性
──ここまでヨーロッパを舞台にしたサッカー映画を紹介してきましたが、次の舞台はイスラエル。いちおうUEFAの一員ではありますが、かつてはAFCに所属していて、それでいて日本には馴染みが薄い国です。タイトルが『ベイタル・エルサレムFCの排斥主義』。実は私、このベイタルって、ずっと気になるクラブだったんですよ。
© Duckin’ & Divin’ Films and Maya Films 2016
福島 そういえば宇都宮さん、イスラエルに取材に行きましたよね?
──2年前のちょうど今頃でしたね。マッカビ・テルアビブの試合は見ることができたんですけど、ベイタルの試合はスタジアムにたどり着くことができずに断念しました。その日は「シャバット」と呼ばれる安息日で、金曜の夜から土曜の夜まではあらゆる公共交通機関が動かなかったんですよ。
福島 徹底していますね。このベイタルというクラブは、イスラエル右派の拠り所になっているような存在で、ネタニヤフ首相もここのサポーターらしいです。イスラエル国内で唯一、イスラム教徒の選手を入れないということでも知られていますね。
──そういえば取材申請をするために、ここの公式サイトにアクセスしたら、ヘブライ語版しかなかったんですよ。マッカビ・テルアビブは普通に英語版もあったんですが。
福島 まあ、英語ページがないのはJクラブでも珍しくない話ではありますが(笑)。話を戻すと、ロシア系のユダヤ人がここのオーナーになって、ビジネス的な考えからチェチェン出身の選手を入れたんですね。それがバリバリのイスラム教徒で、当然チーム内に混乱が起こるわけです。
──いやあ、怖そうな話ですね(笑)。制作がイスラエル、イギリス、ノルウェー、アイルランドという多国籍なのも惹かれます。ヨーロッパの人たちにとって、イスラエル情勢というのはわれわれ以上にリアルな問題として捉えているから、こういった問題作が生まれるんでしょうね。
福島 今までフーリガンを扱った映画をいろいろ見ていますけど、これほどプレッシャーを感じる作品もなかなかないと思います。民族や宗教の問題って、どの国にもあるんでしょうけど、その極北みたいな感じですね。正直、あまり後味がいい作品ではないですが(苦笑)、でもお薦めです!
──次が『アフリカ・ユナイテッド』。イギリス、南アフリカ、ルワンダの製作で08年ですから、もう10年も前の作品になるんですね。
©NICK WALL
福島 例えがちょっと古いんですけれども、初期の『ハリーポッター』とか『ぼくらの七日間戦争』とか、そういう児童文学的なノリの作品ですね。ルワンダでサッカーをしている子供たちに、南アフリカでのワールドカップのエキシビジョンマッチに出るチャンスが巡ってくる。喜び勇んで参加しようとしたら、間違えて国境を越えちゃって、そこから南アフリカを目指すというストーリーです。
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