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【無料記事】献本御礼『ベレーザの35年 日本女子サッカーの歩みとともに』 ベレーザ創部35周年記念誌発行委員会

 国内外での取材でしばらく家を空けている間に、何冊もの献本をいただいた。しばらくお休みしていた当コーナーだが、これを機に少しずつ、いただいた作品を紹介していくことにしたい。で、今回ご紹介するのが久々に「労作」という言葉が頭に浮かぶ、この作品。その名の通り、1981年に設立された女子サッカーの名門クラブ、ベレーザの35年の歩みを綴った記念誌だ。

 タイトルを「日テレ・ベレーザ」ではなく、シンプルに「ベレーザ」としているのは、何度もチーム名が変更されてきたためであろう。読売サッカークラブ女子ベレーザ(81~91年)、読売日本サッカークラブ女子ベレーザ(92~93年)、読売西友ベレーザ(94~97年)、読売ベレーザ(98年)、NTVベレーザ(99年)、そして日テレ・ベレーザ(2000年~)。

 35年の間に5回の名称変更。そこから黎明期の混沌、束の間のバブル、長きにわたる冬の時代といった「日本女子サッカーの歩み」が透けて見える。と同時に、ベレーザ(そしてその妹分であるメニーナ)の日本女子サッカーへの影響力と貢献度についても、ページをめくるたびに実感できるはずだ。本書に寄稿された、大住良之さんの文章から引用させていただく。

2011年のFIFA女子ワールドカップで優勝を飾ったなでしこジャパン23人には、実に9人もの「メニーナあるいはベレーザ育ち」がいた。(中略)ベレーザとメニーナがなければ、なでしこジャパンの世界レベルでの成功はありえなかった。

 個人的には、巻頭を飾る集合写真が興味深かった。最新のものは昨年のリーグ優勝の時のもので、最も古いものは82年のスナップショット。いずれのカットも、選手たちの笑顔が眩しい。しかし背景のスタンドは空席が多く、なかには無人のものも少なくない。20世紀のサッカー少女たちのはちきれんばかりの笑顔と、人影がまばらなスタジアム。そのコントラストに、ベレーザと日本女子サッカーの苦闘の歴史を見る思いがする。

 本書は、関係者の座談会やOGへのインタビュー(上野直彦さんがいい仕事をされている)、そして81年の東京都女子リーグ2部時代から現代に至る記録も丹念に掘り起こされている(ネットではなかなか出てこないデータも多い)。これほどのボリュームと資料価値を持ちながら、価格は極めて良心的。女子サッカーを「文化」にするためにも、ぜひとも手にとっていただきたい一冊だ。定価1500円+税。

【オススメ度】☆☆☆☆★

「東京都女子リーグ2部に所属していた、小金井第一小学校OGのその後が気になりました」

【付記】本稿をアップしてから気づいたのだが、ベレーザ創部35周年記念誌発行委員会の牛木素吉郎さんのブログによれば、本書は「ベレーザOGたちの思い出のための私家版」であるため、書店では販売していないそうである。入手方法は東京ヴェルディのオンラインショップのみ。限定1000部ということなので、入手したい方は急いだほうがいいだろう。

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