宇都宮徹壱ウェブマガジン

映画『クラシコ』、7年後の風景 徹マガ・フォトギャラリー(信州篇)

 先の巻頭コラムでもお知らせしたとおり、5月1日から4日にかけて信州を旅してきた。今回はJ3とJ2を1試合ずつ観戦(1日にAC長野パルセイロ対ガイナーレ鳥取、3日に松本山雅FC対セレッソ大阪)、そして7年に一度の御柱祭で盛り上がる諏訪地方の観光が目的であったが、単なる観光旅行だけでは面白くない。ということで、今回は「映画『クラシコ』から7年後の風景を堪能する」という裏のテーマを掲げることにした。

 映画『クラシコ』は、2009年の北信越リーグを戦っていた長野パルセイロと松本山雅の戦いを縦糸に、そしてそこに関わる人々の人間模様や地域性を横糸にしながら進行していくドキュメンタリー作品である。あれから7年後、この作品を再び見返してみると、実に感慨深い。あの当時、アルウィンで山雅がJ1のビッグクラブと戦うことや、南長野に四面屋根付きの球技専用スタジアムが作られることを想像できた人は、果たしてどれだけいただろうか。

 私自身、北信越リーグや天皇杯、そして地域決勝や全社の取材で、これまでたびたび長野と松本を訪れている。それから10年も経たないうちに、山雅とパルセイロはJクラブとなり、信州のサッカーを巡る環境も激変した。Jリーグが地方都市の風景を変えていくケースを、われわれはこれまでたびたび耳目にしてきたわけだが、同県の2つの地方都市が競い合う形で発展していくケースというものは、極めてレアであると言えよう。

 そんなわけで今回は、出発前にカミさんと『クラシコ』のDVDをあらためて鑑賞してから、信州への旅に出発することにした。現地で出会った人々や風物を織り交ぜながら、さっそく旅の模様をご紹介することにしたい。

 東京発の北陸新幹線で、5月1日の昼前に長野駅に到着。昨年3月の北陸新幹線開通と4月の善光寺の御開帳のタイミングに合わせて、駅の善光寺口と駅前広場はすっかりリニューアルされていた。神社仏閣を思わせるような、巨大な木の柱が実に印象的。周囲を歩くと、あちこちでパルセイロのポスターやノボリを見かける。クラブが着実に浸透していることを実感。

 ホテルに荷物を預けてから、長野駅から篠ノ井駅まで移動。そこからシャトルバスに乗って、南長野運動公園総合球技場に到着。「もともとはキャパ6000人で屋根もほとんどない、小さなスタジアムだったんだよ」などとカミさんに解説しながら周囲を案内する。

 富山の薬売りならぬ、富山のチケット売りを発見! 次節、長野がアウエーで対戦する、カターレ富山のスタッフが前売りチケットを売りに来ていた(もちろんクラブの許可はとってある)。あとで聞いた話では、用意していたチケットはほどなくして完売したとのこと。北陸新幹線が延伸したことで、長野から富山へのアクセスが容易になったことも、好調な売れ行きを後押ししたようだ。

 もうひとつの発見は、長野サポによる「ゲーフラ無料貸出し」。新規のお客さんにゲーフラを持っての応援に参加してもらうことで、選手の名前を覚えてもらえるし、自分でも作ってみようと思うかもしれない。誰の発案かは知らないが、とてもいいアイデアだと思う。

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