宇都宮徹壱ウェブマガジン

【無料記事】献本御礼『NEW LONDON イースト・ロンドンガイドブック』カルロス矢吹著

仕事柄、よく献本をいただく。多くがサッカー関連本だが、中には思わぬ方向から興味深いジャンルの新著をいただくこともあり、大変ありがたく思っている。その一方で、最近はまとまった読書の時間を確保できないこともあり、お礼を伝えるのが精いっぱい。おそらく版元は何かしらの書評を期待しているものと拝察するが、新著が届いて2カ月後にようやく読み始めるということもよくあり、やがて「今さら書評を書いてもねえ」という気分になり、結局いただいてそのままという不義理を繰り返してきた。

さすがにそれではいかんと心を入れ替えるべく、タグマ!版にて『献本御礼』という不定期連載を始めることにした。これは献本いただいた作品(定期刊行物は除く)について、ざっと読んでの感想や著者の方の紹介などをさせていただく、というもの。タイトルどおり、献本への御礼が第一の目的であり、本来の意味での「書評」ではないことをあらかじめお断りしておく。それでも、読者の皆さんが購買を考える上でのヒントは、さりげなく織り込んできたいと考える次第だ。

さて、今回ご紹介するのが『NEW LONDON イースト・ロンドンガイドブック』。著者は、先月徹マガにご登場いただいたカルロス矢吹さんである。今年31歳の若い書き手だが、世界を縦横無尽に駆け巡り、英語とスペイン語を駆使しながら質の高い取材を続け、これまで3冊の著書を上梓している。

4冊目となる本書は、いわゆるガイドブック。ただしユニークなのが「イースト・ロンドン限定」であることだ。イースト・ロンドンといえば、今から17年前にウェストハム・ユナイテッドの試合を観戦する際に「ちょっと危険な香りがする下町だから気をつけたほうがよい」というアドバイスをいただき、おっかなびっくり歩いた記憶がある。ところが著者の矢吹さんによれば、昨今の地価高騰によってロンドンのアーティストやクリエーターが家賃の安いイーストエリアに拠点を移すようになり、2000年以降は「ロンドン屈指の最先端おしゃれスポットに」なったとのこと。

実際、本書には思わず行ってみたくなるようなカフェやパブやレストラン、そしてギャラリーなどの紹介が目白押し。著者が撮影した写真も、現地の空気感をよく再現していて好感が持てた。一般的なガイドブックにはほとんど取り上げられないイースト・ロンドンの情報は、とりわけロンドンを定期的に観光する人にとっては貴重であろう。もっとも、目まぐるしく変化を続けるロンドンのこと。30年後くらいには「2010年代のイースト・ロンドンを切り取った貴重な歴史資料」として、本書は重宝されるのかもしれない。定価1850円+税。

【オススメ度】☆☆☆☆★

<この稿、了>

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