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篠原美也子の月イチ雑食観戦記 第二十四回「セプテンバー・レイン」

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イラスト:篠原美也子

突然夏が終わってしまって、びっくりしている。季節の変わり目って、もっとグラデーションじゃなかったっけ? なんか侘び寂びないなあなどと思いながら、ちょっと肌寒いくらいの雨の中、8月を見送った。

例年の私のスポーツカレンダーでは、7月のウィンブルドンとゴルフの全英オープンが終わると、8月は高校野球を時々眺めながら、月末からのテニス全米オープンまでお休み、となるのだが、錦織選手の活躍のおかげで今年はNHKがマスターズ1000というグランドスラムに次ぐ格付けの大きな大会をカバーしているので、モントリオール、シンシナティとずーっとテニス見て、最後は、あれ、やってるよ、という感じで世界陸上も見て、そうこうしているうちに、あれ、全米始まっちゃったよ、という感じで、いやーきりぎりすの夏でした(笑)。

去年の全米オープンで準優勝だった錦織圭選手は、格下41位にまさかの不覚を取り、残念ながら1回戦で姿を消すこととなった。去年は第10シード。期待の新星とはいえ、あくまでダークホースのひとりに過ぎなかったが、今年は世界4位の第4シード、それだけ見れば立派な優勝候補である。今年こそグランドスラム初制覇、と、日本のニュースは盛り上がっていたし、やはりプレッシャーはあったろう。トリッキーで外れたら外れっぱなしだけど、ハマったら手がつけられないタイプの対戦相手ペイルが、この日はとにかくハマりっぱなしだったというのも確かに不運だった(この人は結局今大会ハマりっぱなしで、これを書いている現在3回戦を突破して快進撃中)。

ランキングが上がれば上がるほど、相手はナッシングトゥルースの気持ちで体ごとぶつかってくるから、こういうこともまあ経験である。世界ランク4位。技術的には届いていても、それだけでチャンピオンになれるほど甘くはないだろう。今回はフルセットの接戦だったけれど、錦織選手は、粘り強いプレイで勝利したかと思うと、見ている方が拍子抜けするほど淡白に負けることがあって、時々とても気になる。負けるのはいい。でも、負けっぷりはとても大事。技術とともにいろいろ跳ね返す気持ちの強さを磨いて、心でも体でも戦えるチャンピオンを目指して欲しいなと思う。

そんなことをつらつら考えながら、サッカーワールドカップアジア二次予選、日本対カンボジア戦。攻める気しかない日本と、守る気しかないカンボジア。なんかこれはあんまり戦いではなかった(笑)。格下を圧倒する迫力に欠けるのは、粒揃いだけど粒が小さいということかなあ。

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