【インタビュー】RBグループサッカー部門ヘッドとして新しい挑戦を決めたクロップが国際コーチ会議で語っていたこと③
「どの選手にもフェアな監督」香川、南野、遠藤を愛した名将クロップのリーダー論「私は本当に普通の人間」「世界最高になろうとは思わない」(中野吉之伴)#サッカー日本代表 #daihyo #香川真司 #南野拓実 #遠藤航 #クロップ #NumberWeb https://t.co/KKn8e9oiao
— Number編集部 (@numberweb) September 15, 2024
前回記事:RBグループサッカー部門ヘッドとして新しい挑戦を決めたクロップが国際コーチ会議で語っていたこと①
RBグループサッカー部門ヘッドとして新しい挑戦を決めたクロップが国際コーチ会議で語っていたこと②
▼ 監督クロップが生まれた瞬間
時は2001年2月まで遡る。
世間がカーニバル週間を迎え、お祭りムードに包まれている最中、当時2部リーグに所属していたマインツは、漆黒の闇の中にいた。
とにかく勝てない。試合をやれどもやれども勝てない。
同シーズン、圧倒的な低空飛行を続けていたクラブではディルク・カルクート、レネ・バンデレイケン、エックハルト・クラウツンといった監督が何とか平常運航へと舵を切ろうと努めたが、どうにもならないまま時間ばかりが過ぎていた。
クラウツンが7試合未勝利で解任されると、スポーツディレクターのクリスティアン・ハイデルとハラルド・シュトルツ会長は、チームのリーダー格の数人を招いて話し合いの場を設けた。
誰かを雇おうにも、お金はない。時間もない。万事休すかと思われたとき、選手サイドが同僚のクロップを暫定監督にすべきと提案したという。
当時の主軸トーマス・ツィーマーは、当時の様子を笑いながらこう明かしている。「(クロップが)将来的に指導者になるタイプだなって仲間内ではわかっていたんだ。ちょうどケガで欠場していたし、どうせプレーできないならベンチに監督として座れるんじゃないかって。そんな冗談めいたところもあったんだよ」※Number WEB「20年前、現役DFクロップを突然監督に…名将を生み出したマインツが貫くブレない哲学とは」より引用
これは僕が21年3月にNumber WEBに寄稿した記事からの引用だ。歴史の中には様々なターニングポイントというのがある。それこそレバークーゼンはシャビ・アロンソ監督とともにブンデスリーガ初優勝を飾ったわけだが、それまでトップチームの監督経験がないシャビ・アロンソを引っ張ってくるには大きなリスクだってあった。シモン・ロルフェスSDは「どんな決断にもリスクとチャンスがある。私たちはチャンスのほうをとりたい」と正規の決断をする。素晴らしい決断だった。
《前例がない》という言葉をよく耳にする。
だからなんなのだ、と問いたい。前例がないからと断られたケースは僕にも何回もある。指導者として、ライターとして、指導者の指導者として、他にも様々な活動をしているが、こちらがどれだけ資料を準備して、論理的な説明を添えても、《前例がないからね》の一言のほうが力を持ってしまう。
そのわりに上層部から話を持っていくと、《前例がない》話だったはずなのに一発オッケーになったりもする。だからそこまで力のある言葉であってはならないと思うのだ。その言葉に逃げるのはずるいと思うのだ。
《前例がない》から熟考を重ねるのはもちろんだ。でもそれがよりポジティブな変化をもたらす《チャンス》あるものなのかどうかを見極めようとする《先見の明》こそが僕らに必要な能力なのではないだろうか。
クロップの指導者キャリアは前例のないことばかりだったが、それを乗り越えてのいまがある。そして25年1月からスタートするRBグループでの仕事もやはり《前例のない》ことだ。そこへ勇敢に精力的にポジティブにチャレンジしようとクロップの生き方からは学べるものが本当にたくさんある。
▼ クロップといえばゲーゲンプレス
―――プレーフィロソフィーについてもお話を。ドルトムント時代以降は、「クロップのもとにいったらゲーゲンプレスを常にやらないといけない」という認識が選手にもあったと思います。
「基本的にそれは正しい。私のチームでプレーしたければ、私が『ゲーゲンプレス!』といってなんの反応もなかったら問題だ。私にとって大事だったのは、例えマインツが白と青のユニフォームでプレーしていたとしても、『あのサッカーはマインツだ!』と認識されることだった。(注:マインツのチームカラーは赤と白)
ではどうすればそれができるのか?
ペップ・グアルディオラは世界最高の監督だ。それでも私たちは彼のチームを何度も勝つことができた。自分達のサッカーのアイディアを持ってプレーしていたからだ。
それに私たちのサッカーはゲーゲンプレスだけではない。ボールポゼッション時のクオリティもどんどん良くなっていった。選手のクオリティがどんどん良くなっていったからだ。
ただ、例え私のチームで80%のポゼッション率を誇れるようになったとしても、ボールロスト時に選手がすぐにゲーゲンプレスへと反応しなかったら、みんなが想像できないくらい私に怒られるだろうね。それをこの23年間、ずっとやり通してきた。どの練習にもゲーゲンプレスがあるわけではない。でも何度も何度も何度も繰り返し行われた部分なんだ」
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