中野吉之伴フッスバルラボ

【キチの挑戦】チーム内でもめごとが起こったらどうしたらいい?子どもたちが見せてくれた対応で実感した紛れもない成長

▼ 子どものもめごとがあったら?

「僕がどうこうすることはできないんじゃないかと思うんだ。僕がいなきゃどうにもできないというのはまずいんじゃないかと思うんだ」

落ち着いたトーンで話をしたら、彼らは黙って考え出した。

ある日のU15トレーニングであった出来事。小柄ながらエネルギッシュなプレーをするけど、時折少し度がすぎる競り合いをする子がいる。便宜上N君としよう。本人には悪気はないんだろうけど、何度もやられていると腹も立ってくる。

「押すなよ」「蹴るなよ」といっても、「そこまでやってないだろ!」「文句言うなよ」と取り扱わない。そんななか、僕が練習を欠席したトレーニング日にちょっとしたいざこざがあった。

チャンピオンズリーグのバイエルン対ラツィオがあったので、そちらの取材を優先したわけだけど、正直なところ全幅の信頼でアシスタントコーチに任せたわけではなかった。というのも、僕不在時にちょこちょこもめごとがあったからだ。

彼自身が子どもたちに心ないことを言ってしまい、親御さんから日本にいた僕のところへ連絡が来たり、もめごとがおこったり、誰かが侮辱的なことを口にしても介入せずにながしてしまったり、思い込みや決めつけで子どもをしかりつけてしまったり。

トレーニングを中止にするか、とも思ったけど、ただアシスタントコーチにしてもやる気がないわけではないし、話が分からない人なわけではない。経験不足からくるストレスやイライラが原因というのは、僕も指導者なりたての頃によくあった。

1月の一時帰国を終えてドイツへ戻ってからはアシスタントコーチがメインになって指導をして、コーチングをしてというトレーニング機会も増やして、僕からアドバイスとか注意をして、子どもたちには「指導者って大変なんだ。だからみんなで支え合おう」という話をしたり。ほんのちょっとずつだけど、改善の兆しはみられてはいた。

こちらとしても100点のトレーニングを求めているわけではない。シンプルで多少面白くはなくとも動いて、ボールに触ることができて、最後にミニゲームができたらそれで十分。

アシスタントコーチに尋ねてみたら、時間は作れるから大丈夫というので任せることにした。

▼ 指導者としての立ち振る舞い

ただ残念ながら子どもたちから後日談を聞いたら、問題が起こってしまっていた。最初は悪くはなかったそうだ。内容的に抜群にいいわけではないけど、やろうとすることは理解できたし、自分達で話しながら頑張っていたと。

新しいアシスタントコーチ候補がサポートに来てくれていたから、それもよかったようだ。なんだけど、そのアシスタントコーチ候補が私用で帰った後に行われた最後のミニゲーム中にもめごとが起こってしまった。

N君はこの日もガツガツ行き過ぎて、周りの意見を聞かなくて、というのがあったので、何人かの子が「もうちょっと落ち着いてプレーしてよ」とか、「ああいうふうにされるのはよくないと思う」と直談判。

そんなやり取りをしていたらアシスタントコーチが来て、事情を聞いて、「話してくれてありがとう」と言って、一度収まったと思われた。N君とアシスタントコーチは親子。N君の話を聞いたコーチが子どもたちの方に来て、突然「おまえらは無視をする子たちだな」と言い放ったという。

なんのことかわからなくて、「なにが?なにをしたっていうの?」と尋ねても、「ディスカッションする気はない」と説明もしない、と。

で結局僕のところに連絡がきた。残念ながらやっぱり何かが起こってしまった。このままではよくない。

次の練習日にトレーニング前にミーティングをしようとおもった。ただ本当はアシスタントコーチに事前に話をしてからしたかったけど、仕事の都合でこの日は来れないという。しょうがないので、それは別件として、子どもたちには次のように話をした。

「ここ最近、チーム内でもめごとが少し多い気がする。お互い自分の言いたいことだけ言ったり、相手のことを考えないというのはよくないと思う。納得いかないことやうまくいかないことはあるのはわかるけど、でも毎回同じようにもめごとが起きて、ごちゃごちゃしてが続くのは哀しいことだよ。互いへのリスペクトを忘れないで、落としどころを見つけようよ

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