中野吉之伴フッスバルラボ

【現地取材】「毎週のように成長している」選手を見つけ出すのがSCフライブルクの補強策。2部から移籍のヘーラーがリーグ屈指のFWへと成長した理由

▼ 理想のプロクラブ

昨季2部リーグからクラブ史上初となるブンデスリーガ昇格を果たしたハイデンハイム。初年度の今季は25節終了時で11位と健闘している。フライブルクやシュツットガルトに勝利しただけではなく、ドルトムントと引き分け、レバークーゼンやバイエルンとの接戦を演じており、その戦いぶりには様々な識者やサッカーファンから称賛が集まっている。

そんなハイデンハイム監督フランク・シュミットが「もしプロクラブの中で理想的な存在をあげるとしたら」として挙げているクラブがフライブルクだ。

シュミット自分達に謙虚で、スタッフや周りの人たちをどれほど信頼して長期的な視点でコレクティブに取り組んでいるかは本当に素晴らしい。降格することを恐れない。また昇格すればいいと考えることができる。ギスギスしていない。学ぶことが本当に多いクラブだ」

そんなフライブルクに関してはこれまでもたくさんの記事を書いてきているが、今回ご紹介したいのは、クラブの補強策。

高額な移籍金で即戦力を狙うのではない。クラブの予算以上の投資をしたりはしない。

自分達のクラブコンセプトにあった選手なのかどうか。どんな取り組みができる選手なのか。

選手のポテンシャルを正しく見定め、そこへ投資する。《いま》ではなく、《未来》への目を持つ。

2年連続ヨーロッパリーグに出場し、連続でグループリーグを突破。昨季は決勝トーナメント1回戦でイタリアの強豪ユベントスを前に涙をのんだが、今季はプレーオフを勝ち抜き、決勝トーナメント1回戦のファーストレグでイングランドプレミアリーグの雄ウェストハムに1-0で勝利。

移籍や市場価値情報を網羅しているサイト《トランスファーマルクト》によると、ウェストハムの選手総市場価値は4億4600万ユーロ(約650億円)!

ブラジル代表ルーカス・パケタの6500万ユーロ、イングランド代表ジャロッド・ボーウェンが5000万ユーロ、ガーナ代表モハメド・クドゥスは4500万ユーロとトップクラスの選手を並べる。

一方のフライブルクは1億8900万ユーロ。最高額がオーストリア代表DFフィリップ・リーンハルトの2000万ユーロ。そこに日本代表FW堂安律、期待の若手DFキリアン・シデッラの1800万ユーロが続く。

ここ数年クラブとして大きな成長を遂げたことで、適材適所で堂安クラスの選手を補強できるようになったとはいえ、そうした投資はフライブルクではレアケース。

ブンデスリーガでも上位クラブの顔触れを見ると、各国代表選手がずらっと名を連れねるが、フライブルクは違う。ウェストハム戦でいえば、スタメン11人のうち、実に6人がクラブ生え抜き。日本代表の堂安のほか、現役代表選手はハンガリー代表ローランド・サライだけ。元イタリア代表ビンツェンツォ・グリフォ、元ドイツ代表マティアス・ギンター、クリスティアン・ギュンター以外は、代表とほとんど《縁》がない選手たち。

だが、ピッチ上でそんなことを感じさせもしない。チームとしてのやるべきことが深くまで浸透しており、選手はみんなどんな試合でも全力で取り組む。

走る、戦う、走る、戦う。

そして《サッカーをする》ことを忘れない。

自分達がボールを持った時の出口の作り方という点で、フライブルクのクオリティはリーグでもトップクラス。

バイエルンをホームに迎えたリーグ戦で引いて守りを固めるのではなく、ロングボールを蹴り入れるのでもなく、GKからボールをつないで、攻撃を組み立ててプレーにスタジアムは沸きに沸いた。

シュトライヒ「ビルドアップでチャレンジしたこと。中盤へ運び、いいサイドチェンジがあったこと。そしてチャンスを作り出したこと。素晴らしかった」

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