中野吉之伴フッスバルラボ

【きちルポ】クラブとしての哲学やコンセプトは自分達の立ち位置と状況を正しく分析できないと生まれてこない

▼ クラブ哲学と育成指針

理想を掲げるのはだれでもできる。美辞麗句を並べたら、すごい仕事をしているように感じさせる。でも、どんなところでも人が複数集まるとずれは生じる。

共通認識の下で、共通の目標をもって、共通の思いで、共通の言葉で取り組んでいても、互いの思惑が合致しないことが出てくる。他で上手くいっていることが自分達のところでもうまくいくとは限らないのが普通だ。

だから、チーム内でどのような優先順位のもと、どのようにコミュニケーションをとっているのかが大切になる。

これはプロクラブであっても、アマチュアクラブであっても、部活動であっても、少年団であっても、一緒のことではないだろうか。

先日までオランダとドイツに研修へ来ていた日本人の方がいた。フライブルクのスポーツ環境とグラスルーツクラブの取り組みなどを視察したいという要望を受けて、様々なプログラムをアテンドし、同行させてもらった。

ブンデスリーガクラブSCフライブルクの育成アカデミーに行ったり、ドイツのサッカー事情を伝えたり。加えてフライブルクにある総合スポーツクラブFTフライブルクにも足を運んで、サッカーだけではなくて、それぞれのスポーツがどのようにドイツの地域と結びつきあって、コミュニティとして存在しているかを一緒に見て回った。

僕が監督を務めるSVホッホドルフにも来てもらい、U13で僕のアシスタントコーチをしてくれているアルディに質問する時間をとってもらった。そんなアルディとのやり取りで印象に残ったものがあるのでそれを紹介したい。

中野 《海外研修》というとそれぞれの国や地域の最高のものだけを見ようとする人が多い。ドイツに来ると、例えば《バイエルン》とか、《ドルトムント》とか。確かにそうしたところにはものすごい施設があるし、非常に高いクオリティの指導者がいるよ。

でも、そこに投じられているお金も時間もマンパワーも、他で真似できないものばかりだ。《すごい》という感想以外持ち帰れない。それを研修といっていいのだろうか?

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