中野吉之伴フッスバルラボ

【ゆきラボ】敵味方をはっきり示さなくては居場所がない、そんな空気が重苦しいです

こんにちは。毎週水曜のコラム「ゆきラボ」担当のゆきのです。

3月に入り、まだまだ風は冷たいものの、景色は少しずつ春らしくなってきました。でも、気持ちの良い青空や、色鮮やかな春の花とは全く不釣り合いな現実は今日も続いています。

「経済制裁」の名のもと、世界各国とロシアとの間で、様々な人や物やお金の流通が止まりつつあります。でも、その中には、ウクライナ攻撃に関して意思決定権を持つ人々にとって、本当に攻撃を止めさせるきっかけになり得るかもしれないと思えるものと、単に反ロシア・嫌ロシア感情を煽っているのではと思えるものと、どちらもあるような気がしています。

永世中立国のスイスが経済制裁に動いたことには驚きましたし、ロシア国民の中でもスイスに資産があるような人はおそらく政権中枢に近い限られた人々だと思うので、それが凍結されればかなり効果的な「制裁」になるんだろうな、と素人ながらに思います。

一方で、人気映画シリーズの最新作がロシアでは公開されないとか、世界中にチェーン店を展開する企業がロシア国内の店舗を休業するとか、ロシア産のウォッカや食品の輸入を中止するといったレベルの「制裁」って、一般心理に働きかける効果とは別に、実際のところ、いったいどれがどの程度「効く」んだろう?と素朴に疑問にも思います。

また、前回のコラムで書いた通り、反軍事行動・反プーチンを明確に示さないロシア系の著名人や企業に対しては厳しい締め出しが続いており、クラシック音楽界では、チャイコフスキーやラフマニノフなどロシアの作曲家の作品を上演することすら自粛しようとする動きもあるといいます。やり過ぎじゃないのか、そこまでして旗幟を鮮明にしないといけないのか、と思ってしまうのは、私がヨーロッパ人ではないからでしょうか。

ロシアのウクライナ侵攻は決して許されない行為だと思いますが、西側ヨーロッパで「普通」の生活を営んでいるロシア系市民に対する差別や嫌がらせが始まってしまっている現状もまた許されないことだと思います。ウクライナへの支援表明とロシア叩きとを、人気取りや目くらましや社会のガス抜きに利用するような行動は厳に慎むべきです。

古今東西、プロパガンダの鉄則は、「敵味方をはっきりさせ、中間を許さず、できるだけ単純なメッセージを、感情的に、大衆に向けてしつこく発信し続けよ」である。

(中略)

政府寄りのプロパガンダだけではない。「このままでは戦争になる」「いま立ち上がらないと」という煽りや、「参加しない人間は政権側」「沈黙は加担と同じ」などのレッテル貼りなどは、左派のデモへの動員にも共通する部分だ。

(中略)

それぞれの個人や組織には事情がある。支援の仕方もそれぞれの自由である。

Yahooニュース「プーチンは侵略者だとしても、日本人はウクライナのプロパガンダを丸呑みにしてもいいのか?」より引用

ウクライナの人もロシアの人も誰も幸せにしない今回の侵攻に、ただただ憤りと悲しみが湧き上がってきます。引き続き注視していきますが、そればかり続くと心がすり減ってしまうので、コラム後半ではそれ以外の最近のドイツの普通の日常の話を書きたいと思います。

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