中野吉之伴フッスバルラボ

【ドイツ便り】大坂なおみと長谷部誠の立ち振る舞い。根底にあるその思いは同じではないのだろうか?

少し前の話になるが、女子テニスプレーヤーの大阪なおみ選手が記者会見拒否⇒大会参加辞退というニュースが世の中に回った。世界トップレベルの選手に起こった事態だけに、ドイツでもかなり大きく取り扱われていたと思う。

そんな中、図らずもちょうどそのタイミングで僕が書いた長谷部誠選手のコミュニケーション能力についての記事がアップされたので、「彼女も長谷部選手を見習うべきだ」という論調の書き込みをちょこちょこ見かけた。

先に断っておくが、この原稿自体はこうした事態があったから書きあげたものではない。そもそもあれだけの内容をそんな簡単にまとめてサクッとアップできたりするものか。相当時間をかけて丁寧に書き上げたものが、たまたまあのタイミングでアップされたという点をご理解いただきたい。

コラムで取り上げたように、確かに長谷部選手の対応は本当に素晴らしい。心構えもまさにプロフェッショナルだし、だからといって厳しすぎるわけでもない。どこか適度に力を抜いている感じも周りの人からすれば、親しみが持てる大事なポイントなのだろう。

でも長谷部だってずっと前からそうだったわけではない。本人も話していたことがあるが、《整っていないから、整えようと努力する》わけだ。感情的になってしまうこともある。何回だってある。若いころはそこまで考える余裕だってなかったりする。

「最初のころはとにかくヨーイドンで(相手に)当たってましたけど、30超えたくらいから、ブンデスリーガの中で余裕をもってやれるようになってきたかなと。それはもちろん経験とかそういうのもあると思います」

どうすれば体も心も頭もベストコンディションで試合に臨めるだろう。
どうすれば世間からの影響をうまくコントロールすることができるだろう。
どうすれば周囲からの注目をバランスよく受け止めて自分の力にすることができるだろう。
どうすればうまくいかないときに自信を持つことができるだろう。

試行錯誤がそこにはあったはずだ。何度もうまくいかないことと向き合わなければならなかったことだろう。そうしたプロセスがあったからこその今なのだ。

一過性のものではなく、自分の生活リズムの中にルーティーンを刻み込み、自分ならではの空気感の作り方、関わり合いの持ち方、うまくいかないときの対処法を作り上げていったのは一朝一夕の話ではないというのを忘れてはならないだろう。

(残り 3067文字/全文: 4110文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

1 2
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ