中野吉之伴フッスバルラボ

プレシーズンで一泊二日の合宿を行い選手の内面を引き出した。

ドイツで15年以上サッカー指導者として、またジャーナリストとして活動する中野吉之伴。18年2月まで指導していた「SGアウゲン・バイラータール」を解任され、新たな指導先をどこにしようかと考えていた矢先、白羽の矢を向けてきたのは息子が所属する「SVホッホドルフ」だった。さらに古巣フライブルガーFCからもオファーがある。

最終的に、今シーズンは2つのクラブで異なるカテゴリーの指導を行うことを決めた。この「指導者・中野吉之伴の挑戦」は自身を通じて、子どもたちの成長をリアルに描くドキュメンタリー企画だ。日本のサッカー関係者に、ドイツで繰り広げられている「指導者と選手の格闘」をぜひ届けたい。

指導者・文 中野吉之伴/【twitter】@kichinosuken

 ▼  指導者・中野吉之伴の挑戦 第九回

7月24日から8月27日まで、まるっと夏休みにした。

本心は8月15日くらいから準備期間をスタートさせたかったし、そのためのスケジュールも考えていたが、選手の多くが8月下旬まで休暇でいない。8月28日を再開日とし、それ以前に休暇から戻ってきたり、休暇に行かなかったりした選手は早めに始動しているU17の練習の合流してもらうことにした。

1か月間チーム練習はないが、だからといって選手は何もしなくていいわけではない。こちらからトレーニングメニューを個別に送り、コンディション調整と不足分の補強に取り組んでもらう。ジョギング、インターバル走、柔軟や体幹トレーニングといった内容で、おおよそ二日に一日、日に多くて1時間くらいのメニューを課した。こちらから細かいチェックはしないし、自主的にやらない選手は後で自分が困るだけだ。この年代ともなると時間の使い方、自分との向き合い方はしっかりコントロールできるようになっていなければならないし、少なくともその必要性を認識してもらわなければならない。

ただ、準備期間がスタートした後に選手の動きを見ての実感は、U16の選手たちはおそらく3〜4割ほどしかマジメにやってこなかったようだ。一方のU17の選手だと、ほぼ全員が取り組んでいた感触がある。それはトレーニング中の態度や立ち振る舞い、集中の切り替えにも現れる。U17はどんなトレーニングでも自分でスイッチを切り替えて真剣にプレーするが、U16はまだまだトレーニングを自分で選ぶ傾向が強い。

・楽しい練習
・好きな練習
・得意な練習
・シンプルな練習

でも、そうした練習は誰だってノリノリでやる。ストレスがかかっていないのだから選手からすれば気分的、思考的に相当『楽』だ。でも、そのノリが試合にあるわけがない。公式戦となれば、様々なプレッシャーがかかってくる。時間的、空間的、環境的。そうした状況下でも最適な決断をして、スムーズなプレーができるようになることが求められるのだ。上位リーグでプレーしたければ、間違いなく必要な要素だ。

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