「football fukuoka」中倉一志

【中倉’Voice】アビスパの未来の姿を願って大宰府天満宮での勝運上昇祈願。八重の大輪が咲き誇る鶯宿梅の前で再び躍進を願う

2月13日、アビスパ福岡は長谷部茂利監督をはじめとするチームスタッフが、昨年に続き大宰府天満宮にて勝運上昇祈願を行った。その後、昨年植樹した鶯宿梅(おうしゅくばい)が大輪の花を咲かせているのを見た長谷部監督は「昨年、植えたときは咲かせようという想いだったが、今年は花についていこうという想い。喜びや幸せ、そういったものをアビスパ福岡に関わるみなさんに届けたい」とコメント。今シーズンに向けての意気込みを口にした。

そんな話を聞きながら、昨年、植樹した際に大宰府天満宮の「禰宜(ねぎ)」が話してくれた言葉を思い出した。

「鶯宿梅は早咲きの白梅で花弁は八重の大輪。鶯宿梅に春を告げる鳥が宿るように、アビスパ福岡が白梅が幾重にも重なり咲き誇るがごとく白星を重ねられ、アビスパ福岡の永遠の春を願う」

昨年、アビスパ福岡はクラブ史上最高位となる7位でリーグ戦を終え、天皇杯では準決勝に進出。そして新国立競技場で行われたYBCルヴァンカップ決勝戦で浦和レッズを破ってクラブ史上初タイトルを獲得。あの時の禰宜(ねぎ)の言葉通り、アビスパは大輪の花を咲かせてシーズンを終えた。それは長谷部茂利監督をはじめとするチーム全員の力で記憶と記録に残る戦いを積み重ねてきた4年間の集大成。そしてアビスパは今、新たな挑戦を始める。

J1復帰を果たし、5年周期に終止符を打ち、J1定着を果たしたのが第1ステージなら、これから始まる第2ステージはJ1上位で戦える力を身に付けるためのステージ。そのためには、この4年間で自分たちで作ってきたクラブの新しい歴史を超えていかなければならない。その戦いは今まで以上に難しい。だが長谷部監督は「強くなるためには通っていかなくてはいけない道」と力強く前を向く。

そしてアビスパ福岡は「感動と勝ちにこだわる」という変わらないスローガンのもと、今シーズンのテーマに「JUMP!」を掲げて2024年シーズン開幕に向けて準備を進めている。誤解を恐れずに言えば、山岸祐也、ルキアン、井手口陽介、そして中村駿と、アビスパの躍進を支えた中心選手の4人がチームから離れたことに不安がないわけではない。だが、ひとつの役割を終えたチームが次の役割を担うためには変化が必要なことも確か。新体制発表会の場で柳田伸明強化部長が「今季の目標を達成することと、それから将来の目標の達成につながる編成をした」と話した通り、チームの躍進を支えてくれた選手たちへの感謝の想いを胸に新しい道へ向かって歩き始めている。

そのための戦力として新たに加わったのが、サンフレッチェ広島からやってたナッシム ベン カリファをはじめ、岩崎悠人、松岡大起、重見柾斗、菅沼一晃、そして期限付き移籍でプレーしていた東京ヴェルディから帰ってきた北島祐二の6人だ。いずれも、これからのアビスパを背負っていくにふさわしい能力を持った選手たち。チームを離れた4人に代わって、これからのアビスパを中心になって引っ張っていくことが求められており、彼らがどのようにチームに融合するかでアビスパの未来が決まる。

「勝負は下駄を履くまで分からない」という諺で知られるように、勝負事の行方を知っているのは神様だけ。どういう結果が待ち受けていて、それが何を意味することになるのかは終わってみるまで誰にも分からない。だからこそ、自分たちに矢印を向けて、「自分たちは何をしようとしているのか。そのために何をしなければいけないのか」と問いかけ続け、どんな時も100%を発揮して目の前の壁にぶつかっていかなければならない。それをやり続けた者だけが願うものを手に入れられることは、大宰府天満宮を訪れたこの日、鶯宿梅に咲き誇っていた八重の大輪が物語っていた。

今年は満開の鶯宿梅に見守られてのスタート。これから目の前に現れてくるであろういくつもの壁を乗り越えて、さらに大きな大輪の花を咲かせること、そしてアビスパ福岡の永遠の春を祝うことを目指して、アビスパは24日の開幕戦へと向かう。
なお、勝運上昇祈願での長谷部茂利監督との一問一答は以下の通り。

◎長谷部茂利監督;
Q:ご祈願を終えた今の率直なお気持ちを聞かせてください。
「勝運上昇祈願ということで、勝ち運、成績が上昇するようにということをお祈り申し上げました」

Q:祈願祭ではどのようなことを神様にお伝えされたのでしょうか?
「今言ったようなこと、また選手、スタッフの顔が目に浮かびました。全員が大きな怪我なく良い成績を出せるように、そんな思いでした」

Q:今日は昨年植樹された梅の花もご覧になりました。
「すべて、この空間を彩っているなという気持ちと、昨年植樹した白梅には相当な数の花が咲いていましたが、昨年は植えたときにはもちろん咲いていませんでしたから、咲かせようということでしたけれど、今年はもう咲いているので、花についていこうと、そういう思いです」

Q:開幕戦で勝利の花を咲かせたいという気持ちは強いですか?
「そうですね。昨年は開幕で敗戦しましたけれど、そのあと勝点を積むことができました。それを最初からできれば、さらに自分たちの目標に近づく良いスタートを切れると思うので、そういう気持ちでいっぱいです」

Q:今日は今シーズンを鼻に例えると、どんな花を咲か着せたいとお考えでしょうか?
「難しい質問ですね(笑)。喜びであったり、幸せであったり、そういったものをアビスパ福岡に関わるみなさんに届けたい。そういう花です」

Q:昨年、こちらで勝運上昇祈願、そして植樹をされて、チームはカップ戦で優勝を飾ったという、大変、験がいい場所だと思います。今年はどのようなお気持ちで今日に臨まれたのでしょうか?
「おっしゃっていただきましてありがとうございます。その通り、私は昨年初めて来て勝運上昇祈願をさせていただいて、ここで祈願できたことがそのまま成績に繋がったのではないかなというふうに考えております。『今年も!』というわけではありませんが、また勝運をいただいたので、近い成績を出せるように、まずチームでは努力をしてそこに持っていきたいと思いますし、勝運にあやかって、ギリギリの試合では運も味方につけて勝点を積み上げていきたいなと思います」

Q:開幕まで2週間を切っていますが、改めて意気込みをお願いします。
「みなさんの期待に応えられるように全力で頑張ります」

[中倉一志=取材・構成・写真]

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