「football fukuoka」中倉一志

アウェイの旅2015 大分編(その1)

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運転免許を持たない私の九州内の移動は、もっぱら高速バス。この日も博多バスターミナルから、8:44発のスーパーノンストップ「とよのくに号」に乗り込む。2時間40分ほど揺られれば大分まで連れて行ってくれる。シートに腰をおろしてくつろぐと、ふと「2時間40分もあれば、新宿まで、いや北海道にだって行けるな」と心の声がつぶやく。いまや、長距離移動の運賃比較では最も安くなった飛行機のおかげで、日本は狭くなったように感じていたが、九州はまだまだ広い。

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少し早目に着いたために。駅前の商店街を中心にブラブラと散策する。私が初めて大分を訪れたのは1999年。J1昇格を目指して戦う大分の試合を取材するためだった。当時は、町でトリニータの文字を見つけるのは難しく、周辺取材でもトリニータのことが話題になることは少なかったが、今では駅前の商店街には、あちこちにトリニータの文字と、マスコットである「ニータン」の似顔絵を見ることが出来る。転機になったのは2002年日韓W杯。その後、様々なことがあったが、今では「おらが町のクラブ」として愛されているのだろう。

そして、大分駅前に足を運んでビックリ。かねてから駅舎の改修工事が進められていたが、その工事も終わり、大分の玄関口は大きく様変わりしていた。名付けて「JR大分シティ」。開業が4月16日のため、試合当日はまだ人波も少なかったが、開業当日は8万人の人出が予想されているそうだ。駅周辺には、古い店がまだ立ち並んでいるが、いずれ再開発され、駅を中心に都会的な街並みに変わっていくのだろう。新しくなる町を嬉しく思いながら、ちょっぴり、古い町並みが消えていく寂しさを感じる。歳を取ったということなのだろう(汗)

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それでも、商店街には昔の大分の空気がそのまま残り、少し路地裏へ足を延ばせば、私の好きな街並みや店が並んでいる。そして、この日の昼食に選んだのは、facebookで教えてもらった「大島屋」だ。入口は「ダウンタウン奥の細道」と名付けられた、人がようやくすれ違うことが出来るほどの路地。5、6メートルほど進んだ所に店がある。「酒場放浪記」に出てくるような店かと思いきや、静かで、落ち着いた感じのする店。大きなカウンターだけの店で、上品な年配の女性が1人で切り盛りしている。様子から察するに、夜はバルとして営業しているようだ。

昼のメニューは「カレーライス」(850円)と「カレーライス大盛り」(1000円)のみ。次があるので(汗)「カレーライス」をチョイスする。運ばれてきたのは、やや黒っぽいルーのカレーライス。口に運ぶと深みのあるコクが広がり、その後を辛さが追いかけてくる。安っぽい辛さではなく、数種類の香辛料が生み出すスパイシーな辛さが舌を刺激する。なるほど、本格カレーと銘打っているだけのことはある。長い間、地元の人たちから愛されてきた理由が分かるような気がした。

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小腹を満たしたら、シャトルバスで大銀ドームへ。そして、いつものように「ぶんごや」の屋台へ向かう。大銀ドームのスタジアムグルメは数あれど、いつも食べるのは「ぶんごや」の「トリニータ鍋」(500円)と「中津唐揚げ」(600円)と決めている。トリニータ鍋とは、みそ仕立てのスープに、だんご麺、うどん麺、ちゃんぽん麺のいずれかを入れたもの。もちろん、一番人気は大分の郷土料理である「だご汁」。この日も、私の次に並んでいた人でだんご麺は売り切れた。

そして「中津唐揚げ」。大ぶりの唐揚げが、容器の蓋が閉まらないほど入っていてボリュームはたっぷり。揚げ加減も絶妙で、肉が実に柔らかい。そして、口の中に広がるたっぷりの肉汁と、スパイスの効いた濃いめの味付けが食欲を誘う。1人で食べるには量が多すぎるかと思ったが、気が付けば完食していた。
さて、アウェイグルメを食べつくすという、いつもの儀式を済ませたら、いよいよ、試合開始。大銀ドーム初勝利を挙げるために気合いを入れて記者席へ向かった。(その2に続く)

【中倉一志=取材・文・写真】
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