【インタビュー】「天皇杯に賭けたそれぞれの想い」「このチャンスを逃さない」 #望月湧斗 #reinmeeraomori
天皇杯に賭けたそれぞれの想い
2018年6月6日 水曜日、天皇杯2回戦JFA 第98回全日本サッカー選手権大会、ジェフ千葉対ラインメール青森の試合がフクダ電子アリーナでおこなわれた。
試合の経過は以下のようになった。
試合開始3分になって青森は中盤でボールを奪うとすばやくカウンターを仕掛ける。FWの太田徹郎がGKと1対1になって、落ち着いてゴールネットを揺らした。前半は、このまま1-0で青森がリードする。後半になり途中から試合に入ったFWの指宿洋史が、青森がクリアしたこぼれ球をゴールに押し込んだ。
千葉の逆転弾は、セットプレーからこぼれ球をMFの清武功暉にシュートされる。この得点は、延長戦の前半だった。
しかし、ドラマは延長戦後半に待っていた。ヘディングシュートがポストを叩いてボールが跳ね返る。クリアしようとした千葉のGK佐藤優也の手がボールに届かずに、延長から出場したFW浜田幸織がこぼれ球をゴールする。2-2の同点になって延長戦が終了する。そして、運命のPK戦へと突入して、青森は敗れることとなった。
今回、連載記事として青森の監督や選手たちの声を届けたいと考えている。タイトル「天皇杯に賭けたそれぞれの想い」の中で、彼らのコメントを紹介しながら、それぞれの「想い」を伝えていきたい。
第1回は、サイドバックが本職の望月湧斗を取り挙げる。彼は、武蔵野シティFCから移籍してきた。昨年、私は、青森の練習を取材した際に、望月から話を聞いたことがある。
「なぜ、ラインメールに移籍してきたのか?」と望月に尋ねた。
彼は、「サッカーがしたかったんです。サッカーに打ち込む環境でサッカーがしたかった」と語る。
「武蔵野シティでは、サッカーに打ち込めなかったの?」
そうした質問にも彼は誠実に答える。
「武蔵野は、社員選手が多いんです(前身は横河電機)。練習に選手全員が参加することが、なかなかできなくて、紅白戦も満足にできない時があった。8対8での紅白戦をやったりしました。それはもう、ミニゲームですよね」
私は彼に「ラインメールに来て満足しているのか?」と聞いた。
「はい、サッカーだけに打ち込める環境です。だから、今という時間を大切に過ごしたいんです」と答える。
望月に取材した記事は以下。
しかし、葛野昌宏がヴァンラーレ八戸の監督に就任したことで、望月の出番は減ってしまった。今シーズンは、ずっと控えメンバーとして過ごした。私は、望月がどうしているのか気になって、奥山泰裕に近況を尋ねたことがあった。
この天皇杯の前のリーグ戦、6月2日の流経大ドラゴンズ龍ヶ崎戦で、望月はスタメン出場した。それには、理由があった。レギュラーメンバーだった選手が怪我をしたので、望月に出番が回ってきたのである。
天皇杯の試合が終わって、控室から最後に出てきた望月を待って話を聞いた。
■僕にとっては、この天皇杯は大きな試合になった
——まず、天皇杯の試合でスタメン出場。緊張したの?
望月 やることは自分の中で整理できていたんです。だから、楽しんでやろう、と自分に言い聞かせて、そうすることが一番いいと考えました。
——監督には、試合前に何か言われた?
望月 監督には特に何も言われていないです。
——あっ、そうなの?
望月 いつも通りですね。練習でやっているプレーをいつも通りやることを望まれていたんだと思います。
——ジェフはサイドの選手がタッチラインに張るやり方をとる。相手のウイングとマッチアップ状態で、ガンガンこられていたね。
望月 そうですね。前半の立ち上がりとか、マッチアップのところで相手にうまくやられていたんです。だから、後半になってヤス(奥山)さんと、ポジショニングについて話し合って修正できました。相手に前を向かせないように。縦に入る瞬間には相手の前に立ってプレスが賭けられているように。そうしたこと話し合って、いい形を作り出してケアできていました。
——うまく守れていた場面と、そうでない場面があったよね。相手にクロスを何本か上げられていた。あれに関してはどう思う?
望月 相手の前に寄せたら、抜かれる感じがあったので、そこはうまくいきませんでした。自分の間合いで寄せられなかった。
——ただし、相手には十分な体勢からクロスをあげさせないようにケアしていたよね。
望月 そうです。コースを限定してクロスを上げさせていました。すべてのボールをアウトボールにはできないので、ある程度上げられることは仕方がない部分があります。だから、相手が満足いく体勢ではクロスを上げさせないようにしました。
——攻撃に関してはどうなの?
望月 相手がサイドでワイドに張るので、そのせいでなかなか上がれなかったですね。
——奥山くんが後半に選手交代されて、その後、望月くんが奥山くんのポジションのサイドハーフ(SH)を任されたんだね。
望月 SHは練習の紅白戦でもやる機会があったので、普通に入れました。
——監督から何か指示はあったの?
望月 攻撃の時に「クロスで終わってくれ」と言われました。
——そして、延長戦になるわけだよね。
望月 延長前半で2−1になったんですけど、必ず1回はチャンスがくると思っていました。
——2−2になって、その時にPKが頭に浮かんだ?
望月 そうですね、PKになるだろうと思っていました。
——PKの順番は誰が決めたの?
望月 5番目までは監督がその場で決めました。選手の目を見ながら、それぞれの順番を指していきました。
——5番目からはどうしたの?
望月 そこでは決めてなかったんです。「5人目で決めて来い」と監督が言ったんです。
——順番を待っていて、どんな気持ちになった?
望月 横くん(GK横山卓司)だったら止めてくれるかなと思っていたんです。実際、1回止めましたからね。まあ、PKは運ですから。しょうがないですよ。
——天皇杯に出場して、自分の出来を総括してみてくれる。
望月 全然ダメですよ。自分は守備が売りなんですが、相手はタフでした。
——監督が変わったけど、どう?
望月 楽しいです。指導が細かいんです。
——そうか、心配したよ。ずっと試合に出れていなかったのから。
望月 僕も、首になるかもしれないと、焦りました。
——この機会は、望月くんにとってはチャンスなんだから、絶対に逃さないようにしないとね。
望月 はい。僕にとっては、この天皇杯は大きな試合になったと思います。まあ、いつも通りにやっただけなんですが(笑)。
川本梅花