宇都宮徹壱ウェブマガジン

金沢ゴーゴーカレースタジアムにこだわった理由 能登復興応援チャリティーマッチ開催秘話<3/3>

きっかけはツエーゲン金沢のボランティア説明会 能登復興応援チャリティーマッチ開催秘話<2/3>

「サッカーどころではない」被災地の現状

──420日のチャリティーマッチに話を戻します。こういうサッカーを通じた被災地支援のイベントって、本来であればJFAとかJリーグが呼びかけて開催されるべきだと思うんですよ。ところが今回、そういった話がまったく出てこない。ようやく4月に開催されることになったと思ったら、言い出しっぺはJクラブでも県協会でもなく、金沢の歯医者さん。これはサッカー界で仕事をしている人間のひとりとして、少し恥ずかしく感じました。

【編集部註】JFAは4月18日、なでしこジャパンによる親善試合「MS&ADカップ2024 ~能登半島地震復興支援マッチ がんばろう能登~」を7月13日に金沢ゴーゴーカレースタジアムにて開催することを発表(参照)

小島 まあ、僕が発起人であることは間違いないですが、ひとりでこんな突飛なことをやろうとは思わなかったですよ。多くのご縁が繋がって、このチャリティーマッチが成立したんです。

──そのご縁の中でも、特に重要だったのが佐藤寿人さんの存在ですよね。彼とは、どのような経緯で知り合ったのでしょうか?

小島 きっかけは、地域リーグ時代にツエーゲン金沢でプレーして、今もこっちでスクールコーチをしている木寺浩一でした。ウチのJFL昇格の功労者ですね。ツエーゲンの前はサンフレッチェ広島で、チームメイトだった寿人くんとは仲が良かったみたいです。その木寺くんから「寿人が金沢に来るので、一緒に飯食いませんか?」って誘われたんですよ。そこからぐっと距離が縮まりましたね。

──なるほど。420日という開催日について、先ほど「ゴースタがその日しか空いてなかった」とおっしゃっていましたが、西部緑地公園の陸上競技場という選択肢もあったと思います。ゴースタにこだわった理由って、何だったのでしょうか?

小島 ひとつは被災地の子供たちに、あのスタジアムを見せてあげたいということ。そして新しいスタジアムのピッチで、サッカーをさせてあげたいというのがありました。1月中旬くらいの話ですが、たまたま県協会の人と話をしていたら、能登のすべての少年チームから「3月末のフットサル大会を辞退したい」という知らせがあったと聞かされたんですね。

──つまり、それくらい「サッカーどころではない」という状況だったということですよね。

小島 そうです。被災地のグラウンドは、自衛隊の車両で埋め尽くされている。体育館は、避難所となっている。ボールを蹴る場所はないし、メンバーもバラバラになってしまった。そうなると、2カ月先の大会でも辞退するほかないですよね。そんな話を寿人くんとしていたら、チャリティーマッチの話になったというわけです。

──その後、遠く離れたカリフォルニアからスポンサーの話があり、何とか開催に向けた流れが生まれます。それとは別にもうひとつ、ちょんまげ隊長ツンさんも加わることになりました。これは、どういうきっかけだったのでしょうか?

小島 元FC東京の石川直宏さんがきっかけですね。石川さんは横須賀の出身ですが、ルーツは石川県にあるらしく、親族の方々もたくさんいらっしゃるそうなんです。今回のチャリティーマッチにも積極的で、その石川さんがツンさんをつなげてくれたんです。

──そういえば先のこけら落としで、ツンさんたちが能登の子供たちを招待していましたが、石川さんがビデオメッセージを寄せていたそうですね。

小島 そうです。ツンさんからは「決して邪魔しませんので、ぜひ仲間に入れてください」とおっしゃってくださって。すごく謙虚な方なんですよ。「いやいや、邪魔だなんて(笑)。ぜひ一緒にやりましょう!」ということで、ツンさんにも加わっていただくことになりました。

──小島さんもツンさんも、私とは長い付き合いですが、実はおふたりは初対面だったんですよね。このラインがつながったのは、個人的に嬉しく思っています。

金沢に貢献したOBたちに「恩返し」したい

──先日、ゴースタでの開幕戦に伺いましたが、1万人収容なのに3352人しか入っていなかったのが非常に残念でした。その後も、満員どころか5000人も入らない試合が続いています(註:46日の松本山雅FC戦で5622人)。このチャリティーマッチが、ツエーゲン金沢の集客の起爆剤になるといいですね。

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