オフ・ザ・ピッチでも存在感を示していたサウジアラビア Jリーグ初の外国人元社員が語るアジアと日本と中国<1/3>
先週、JFAの第15代会長に宮本恒靖氏が就任した。47歳という若さに加え、ワールドカップ出場経験を持つ元Jリーガー(さらにはJクラブ監督の経験あり)の会長就任は初めて。何かと話題性の多い新会長だが、もうひとつ忘れてならないのは、彼が「FIFAマスター」を修了していることだ。
FIFAマスターは国際的なスポーツ機関で働く人材育成を目的に、2000年に開設されたスポーツ学の大学院。今回ご登場いただく朱暁東(ZHU XIAODONG)さんは、このFIFAマスターの2期生であり、宮本会長の先輩にあたる(受講にあたり当人からも相談があったそうだ)。また、Jリーグ初の外国人社員であり、現在は株式会社SponsorForceの創業者に名を連ねている。
上海出身で日本語が堪能な朱さんとは、かれこれ20年以上の付き合いになる。再会のきっかけとなったのが、実は『異端のチェアマン』。「とても興味深かったです!」というDMをいただき、何度かやりとりするうちに「中国語版を出せないか、向こうの出版関係者に聞いてみます」という、なんとも夢のある提案をいただいた。
それはそれとして今回、朱さんにインタビューを申し込んだのは、3つのテーマについてお話を伺いたかったからだ。すなわち、アジア(とりわけ中東)のスポーツビジネス事情、FIFAマスターでの学び、そして中国サッカー凋落の原因について。
一見するとバラバラに思えるかもしれない。けれども、この10年で「爆買い」の震源地が中国から中東に移る中、若きJFA会長はFIFAマスターでの学びをどう活かしていくのか──。そうして考えると、この3つのテーマはきれいにつながる。アジアのサッカーを俯瞰する、今回のインタビュー。ぜひ、最後までお読みいただきたい。(取材日:2024年3月6日@東京)
■アジアカップで中国企業の看板が少なかった理由
──朱さん、よろしくお願いします。先日、カタールに行ってアジアカップ決勝をご覧になったそうですね。現地ではフットボール的にも、そしてビジネス的にも、さまざまな観点からアジアサッカーの現状を俯瞰できたのではないでしょうか?
朱 日本がファイナルに行くと信じていたので、入れ違いになってしまったのは残念でした。フットボールの面でいえば、カタールで行われたというのもあるんですが、やはり中東諸国が強くなってきた印象があります。日本がアジアナンバーワンであることについては、議論の余地はないですが、だからといって楽に勝てるわけではない。それが今大会で明らかになりましたね。
──思えば今大会は、もともとは2023年に中国で開催されることになっていたんですよね。コロナ禍の影響で開催を返上して、カタールでの代替開催となったわけですが。
朱 その結果として、3大会連続での中東開催になります。前回がUAEで今回がカタール、そして次回がサウジアラビア。東アジアでアジアカップが開催されないのは、残念なことではあるんですけれど、向こうはお金をもっていますからね。
──サウジアラビアは世界中から選手を爆買いしていますけれど、今大会でも国としての存在感を示していたんでしょうか?
朱 サウジでは今「NEOM(ネオム)」という計画都市を建設中で、その広告をあちこちで目にしました。2027年のアジアカップもそうだし、2029年には冬季アジア大会の開催も決定しています。2034年のワールドカップも、おそらくサウジで開催するでしょう。そうして考えると中東、とりわけサウジは日本企業にとっても面白い市場になるんじゃないですかね。
──最近のワールドカップでは、中国企業の看板が目立っていましたけれど、今大会はどうだったでしょうか?
朱 今大会は少なかったですね。ただし、実際に試合会場に置かれた看板と、TVに映る看板は違うんですよ。例えば日本では、イラク戦とイラン戦が地上波で中継されて、日本企業の看板が多かったように見えたと思うんです。けれども、実際にはそうではなかったんですよ。
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