宇都宮徹壱ウェブマガジン

「今そこにあるサッカーを愛せ!」とは何か? ロック総統から次世代サポへの伝言<1/2>

 いよいよ3月13日からJFLが開幕するのに合わせて、今週はスペシャルな対談をお届けすることにしたい。ご登場いただくのは、皆さんご存じ「真のフットボール革命の指導者」にしてホンダロックSCのサポーター、ロック総統。そして、OWL magazineアンバサダーで奈良クラブのサポーター、桝井かほさんである。

 この異色の顔合わせは、実のところ「親子ほど世代が離れたサッカーファンのコミュニケーションは可能か?」という実験的な試みでもある。かほさんは1998年生まれ。今回の対談で、総統の息子さんと同い年であることが判明した。そんな彼女に「今そこにあるサッカーを愛せ!」をはじめとする、総統のメッセージはどれだけ理解できるのだろうか──。そんなふとした疑問が、今回の企画のきっかけだった。

 周知のとおり、Jリーグの入場者数の平均年齢は、ずっと右肩上がりの状況が続いている。最初は親子連れでスタジアムに通っていても、やがて子供が部活や受験で忙しくなり、気がつけばボッチ観戦。成長した子供たちが、スタジアムに戻ってくるかといえば、なかなかそうもならないのが実情のようだ。Jリーグでさえそうなのだから、マニアックなおっさんばかりが集うJFLは推して知るべし。

 だからこそ、かほさんのような若い女子サポは大事にしたい。ただし、チヤホヤするという意味ではない。そうではなくて、世代の異なる古参サポと引き合わせることで、さまざまな考え方や価値観を共有してほしいと考えた次第。無茶振りとも言える私の提案に、快くお付き合いいただいた総統とかほさんには、あらためて感謝したい。(取材日:2022年2月27日@高円寺KITEN!

<1/2>目次

*「総統って怖い人だと思っていたんです(笑)」

Jリーグには「クラブの序列」が歴然と存在する

*「Jに行けば商売がやりやすくなる」は本当か?

写真提供:ロック総統

「総統って怖い人だと思っていたんです(笑)」

──今日はよろしくお願いします。お互い初対面ということで、簡単な自己紹介からお願いします。まずはロック総統から。

ロック総統(以下、総統)急に振られると、照れ臭いですね。「真のフットボール革命の指導者。ロック総統である!」というのが通常の入りなんですが、ホンダロックSCのサポーターを20年くらいやっています。最近はあまりイベントめいたことはしていませんが、常に下部リーグを盛り上げていこうという思いは継続中です。

桝井かほ(以下、かほ) 桝井かほと申します。私は高校生の頃からサッカー観戦が好きで、友だちに誘われてセレッソ大阪を見に行くようになって、まずセレ女になりました。そうしたら、セレ女仲間が奈良クラブにハマって、私も付き合うようになって、だんだん奈良のほうに重心が移っていくようになりました。ちょうど奈良が関西リーグからJFLに昇格して、さらに上へというタイミングでしたね。

 それで私も「何かできることはないかな」と思って、セレッソでインターン修行することにしたんですけど、やっているうちにビジネスそのものが面白くなっていったんですね。それで大学をすぱっとやめて、タイのサッカークラブに就職しました。結局、コロナ禍の影響もあって1年で帰国して、その後はサッカーのスパイク専門の靴紐を作る会社(kushule)を起業しました。

総統 起業なんて、すごいですね! 私は商才がまったくないので、起業する勇気を賞賛します。それにしても、靴紐だけで商売になるんですか?

かほ いちおう、なっていますね。すごく儲かっているわけではないですが(苦笑)。

──かほさんは、いつから総統の存在を認識していましたか?

かほ 奈良のホームゲームを観戦していた時に、たまたまいらしていたんです(参照)。周りが「あれがロック総統やで!」と言うので、私も「おおっ!」という感じで(笑)。

総統 2014年か15年ですね。その頃は3回、奈良に行っています。

──当時の印象と、こうして会ってみた時の印象は違います?

かほ 私、総統って怖い人だと思っていたんです(笑)。スタンドで演説していたし、SNSで少し過激な発信をしているのも見ていましたので。でも、こうしてお会いしてみると、すごく柔らかい方でびっくりしています。

総統 宇都宮さんはよくご存じですが、実は私、けっこう照れ屋で素の自分が面白くないんですよ。それに普通のおっさんが演説していても、誰も耳を傾けようとは思わないですよね。私がシャアや過激派のコスプレをするのも、本来の自分からかけ離れたイメージづくりをする必要があったんです。今日も、ウチの息子と同い年の女性と対談ということで、どこまで話が噛み合うのか不安しかない(笑)。

──サッカーは国籍や人種や世代も超えますから(笑)。ということで、さっそく本題に入りましょう。今季のJFLを展望する上で、三浦知良の鈴鹿ポイントゲッターズ加入がひとつのポイントになるかと思います。さすがの総統も、まさかJFLでカズのプレーが見られるようになるとは、想像もしていなかったのでは?

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