宇都宮徹壱ウェブマガジン

「Jリーグを見習え!」とは言わないけれど あまりにも残念すぎる東京五輪の現状を憂う

 Jリーグ開幕まで、あと1カ月を切った。

 すでに各クラブが春季キャンプを開始する中、気になるのが今季の日程。今月22日に発表されたJ1とJ2のスケジュールを見ると、昨年ほどではないものの過密な印象は否めない。昨シーズンは降格がなかったため、今季のJ1は20チームによる38節。加えて第21節(7月10・11日)から第22節(8月9日)まで、ほぼ1カ月にわたってリーグ戦は中断期間となる。これは言うまでもなく、東京五輪開催によるもの。とはいえ大会の開催が、ここに来て不透明となっているのは周知のとおりだ。

 原博実副理事長は、Jリーグ公式チャンネルの中で「もしも東京五輪が中止になったら?」という質問に答えている。いわく「そうなったら(日程を空いた期間に)入れていくしかないよね」(参照)。当然といえば当然の判断だが、このタイミングで「東京五輪が中止になったら」について、原副理事長が発言していることは注目に値する。これまた周知のとおり、JOCや各競技団体、そして政府関係者は「中止になったら」という発言を(本心でどう思っているかはともかく)厳に慎んでいるからだ。

 危機管理に優れたJリーグのことだから、おそらくプランBの日程についても準備をしていることだろう。ところが政権与党をはじめ、大会に直接かかわる人々の最近の発言を聞く限り、プランBについて考えている様子は感じられない。IOCのトーマス・バッハ会長に至っては「プランBはない」と明言しているくらいだ(参照)。サッカーファンにとっても、決して無縁ではない東京五輪。開催を半年後に控えた今、「後出しジャンケン」になる前に、この件について個人的に思うところを記しておきたい。

 いきなり結論から述べる。コロナ感染の終息が見えない現状を鑑みるなら、まことに残念ではあるが、大会の中止あるいは延期という判断は極めて妥当であると言わざるを得ない。もちろん、五輪という夢の舞台を目指して血のにじむような努力を重ねてきた、アスリートの無念と絶望は察するに余りある。しかしながら、どれだけスポーツが素晴らしく価値のあるものであっても、生命の重みには代えられない。それはスポーツのみならず、芸術であれ、音楽であれ、演劇であれ、何ら変わることはない。当たり前の話ではあるが、そこはきちんと確認しておく必要がある。

(残り 1459文字/全文: 2426文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ