宇都宮徹壱ウェブマガジン

私が市民クラブに行ったら始めたいこと えとみほ(江藤美帆)インタビュー<1/2>

 今週は、このほど栃木SC マーケティング戦略部部長に就任されたばかりの「えとみほ」こと江藤美帆さんのインタビューをお届けする。えとみほさんといえば、IT系スタートアップ、あるいはSNSマーケティングの第一人者として知られ、「スマホの写真が売れちゃうアプリ Snapmart(スナップマート)」を企画開発したことでも知られる。このほど、スナップマート株式会社の代表取締役を退任。その後の動向が注目されていたが、今月1日にJ2の栃木SCへの「電撃移籍」が発表され、彼女のnoteでの記事twitterでトレンド入りした。

 えとみほさんについては、かねてよりJリーグに対するビジネスやマーケティング視点でのツイートに注目していた。しかも、ジェフユナイテッド千葉の熱烈なサポーターでもあり、提言には常にファン目線があることにも好感を抱いていた。幸いtwitterで相互フォローしていたので、ダメ元で取材依頼をしたところ、拍子抜けするくらいあっさりとOKをいただき、今回のインタビューが実現した。

 これまで、さまざまなメディアから取材を受けているえとみほさんだが、サッカーメディアでの登場は当WMが初めて。Jリーグファンにとっても、そしてスポーツビジネスに関心がある人にとっても、非常に刺激的かつ示唆に富んだインタビュー内容となっているので、最後までお読みいただければ幸いである。

 なお、すでに告知したとおり、当WMではえとみほさんをお招きしてのトークイベントを6月1日に開催する。栃木SCでの仕事を始めて、ちょうど1カ月。彼女がJリーグや地方クラブの現場で何を思い、どんな問題意識と可能性を感じているのか、当日はたっぷりお話を伺う予定だ(参照。一般告知後は、すぐに完売となることが予想されるので、ご希望の方は早めの申し込みをお勧めする次第だ。(取材日:2018年4月24日@東京)

<目次>

*当初は建設的な議論だった「エンブレム問題」

*サッカークラスタのSNSはなぜ炎上しやすいのか?

*楽天がバルサの胸スポンサーになった狙いとは?

*アメリカ留学、ライター業、そしてビジネスの世界へ

*ジェフサポは「もうやめたいと思うこともある」けれど

*サッカー業界は外から見ると「閉鎖的で男社会」?

当初は建設的な議論だった「エンブレム問題」

──今日はよろしくお願いします。先日のスペイン旅行について伺おうかと思っていたら、ちょうど水戸ホーリーホックのエンブレムに関するツイートが炎上するという一件がありました。決して蒸し返すつもりはないのですが、えとみほさんの意図が上手く伝わっていないようにも感じましたので、まずはその真相から伺いたいと思います。

江藤 あれは後日謝罪したんですが、自分でもちょっと不用意な発言だったなと思いました。もともとtwitterって、何が燃えるのか予測できないところがあるんですけども。実は私、twitterのアカウントをいくつか持っているんですね。たとえばジェフが勝った、負けたの話をするときは、別のサッカー専用アカウントを使っていて、そこではいろんなJクラブのサポとつながっているんです。

 一方で「えとみほ」のアカウントは、ビジネス系の人たちと主につながっていて、フォロワーの属性もサッカーに興味がない人が9割です。今回はサッカーアカウントじゃなくて、サッカー興味ない人対象のビジネスアカウントだったんで、そういう一般の人たちと話している感覚でツイートしちゃったんですよね。それが何かの拍子でサッカークラスタ方面に流れて、3つ続けてツイートしたうちの1 つだけが拡散しちゃって、それで炎上したんじゃないかと。

──なるほど。ただ、えとみほアカウントでも、最近はビジネスの観点からのサッカーに関するツイートが増えているから、サッカーファンのフォロワーもかなり増えているように感じます。逆にサッカー専用アカウントだったら、こうした不用意なツイートはしなかったと。

江藤 いや、どうですかね。サッカーアカウントのほうでは、もっと踏み込んだ発言もしてるんで。ただ、あっちだったら自分が応援してるクラブ以外に言及することはなかったかもしれないですね。えとみほアカウントのほうは「フォロワーはサッカーにもJリーグにもまったく興味がない」という前提でツイートしてるんで、サポーターの方からしたら「そういう言い方はないだろう」と思われる場合もあるかもしれません。ただ、あのエンブレムの話も最初から燃えてたわけじゃないんですよ。

 私のツイートを3つつなげると「水戸のエンブレムは水戸黄門を想起させるから、女性や若者向けのグッズが作りにくいのでは?」という話だったんですが、途中までは「そうだよね」「でも、工夫すれば外国人ウケするグッズとか作れるよね」「ルイ・ヴィトンみたいに地模様にしちゃえばいいんじゃない?」っていう建設的なデザインの話で終わってたんです。でも、水戸の公式アカウントが拾ってツイートしたあたりから、フォロワーの多いメディアの人なんかも会話に入ってきて。そこから、エンブレムが「ダサい」「ダサくない」みたいな話に簡略化されて拡散したんだと思うんですよ。

──それで炎上していったと。

江藤 そうです。私のツイートを全部読んで、擁護してくれた人もいっぱいいたんです。でも(そうではない人は)「水戸のエンブレムがダサいって話だけど」みたいな前置きして意見を言ってて「おいおい、私はそこまでは言ってないぞ」と(苦笑)。

──そんな感じでしたか(笑)。

江藤 そんな感じでした。でも、あれはすごく燃えているように見えるんですけれども、自分のアナリティクスで見るとそこまででもないんですよ。拡散している数で見ると、いつものビジネス系のバズよりも全然小さくて、要するにJリーグの濃いクラスターに飛び火して、その中ではガンガン燃えているんだけど、知らない人にはほとんど届いていないという。ある意味興味深い現象でした。

──確認ですが、もともと水戸のエンブレムをけなす意図はなかったんですよね? ちょうどスペインを旅行していた時に、向こうのグッズがサッカーサッカーしていなくて「女性でも普段使いやすい」ということを言いたかったと。

江藤 もちろんそうです。エンブレムの一覧を見て、サッカーに興味ない人にも説明しやすかったのが水戸だったというだけで、別にジェフでもどこでもよかったんです。ジェフも主張の強い色合いなので、そのまんまだと女性向けグッズ作りづらいのは同じだと思うので。

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