宇都宮徹壱ウェブマガジン

今年も国内外の名作・異色作が目白押し! ヨコハマ・フットボール映画祭2017プレビュー


 毎年、オフシーズンのサッカーファンを楽しませてくれるヨコハマ・フットボール映画祭(YFFF)。今年は2月11日から17日まで、横浜のブリリア ショートショート シアターで開催される。

 YFFFが始まったのは2011年で、今年で7回目。旧徹マガでは、第1回からイベントの模様のレポートや作品のプレビューを行ってきたが、今年はWMとして初めてYFFFを取り上げる。コンテンツは2つ。まず、実行委員長の福島成人さん、そしてボランティアスタッフの加藤麟太郎さんによるプレビューインタビュー。そして、今回の出品作品『Football Take Me Home 勇者たちの戦い』(以下、『勇者たちの戦い』)より、プロデューサーのベン・ティムレット氏と監督のダグラス・ハーコム氏へのSkypeインタビューである。

 思えばYFFFが始まった11年は、東日本大震災が発生した年でもあった。あれから間もなく6年。奇しくも今回は、震災をテーマにした2作品(前出の『勇者たちの戦い』と『MARCH』)が公開されることとなった。「何だか一周りした感がありますよね」という福島さんの感慨に、私も同意するばかりである。長く地道に続けることで見えてくるものもあるし、新たな作品や人との出会いもある。というわけで、まずは今年のYFFFでの上映作品を紹介していくことにしたい。(取材日:2017年1月21日@東京)

■キーンとヴィエラ、現役時代のプレミアリーグを語る

――今年もやってまいりました、ヨコハマ・フットボール映画祭2017。今年で何と7回目ですか。思えば第1回がスタートしたのが、東日本大震災のまさに直前でしたね。

福島 そうです、2月19日でしたね。後ほどお話しますが、今回上映する『勇者たちの戦い』という作品が、まさに震災直後の仙台が舞台で、イギリス人スタッフによって制作されているんですよね。今回こうしてYFFFで上映できることができたのは、本当によかったと思っています。

――『勇者たちの戦い』については、のちほどあらためて伺うとして、それ以外の作品の紹介からいきましょう。まずは『キーンとヴィエラ:最高のライバル』。マンチェスター・ユナイテッドとアーセナル、それぞれの元キャプテンの顔合わせですね。


© ITV Sport 2013

福島 これはNumberでも書かれている田邊雅之さんからのご紹介で、英国のITVが制作した作品なんです。ITVはプレミアリーグ設立にも大きく関わっているわけですけど、プレミア黎明期のスター選手である2人の対談ということで、当時の名勝負や騒動なんかを振り返るという作品です。

――日本のプロ野球でいえば、江川卓と小林繁みたいな顔合わせですね(笑)。でも確かに、この両者が現役時代のプレミアって、思い出補正も作用して、今見ても熱いものがこみ上げてきますよね。

福島 マンUは三冠達成するし(99年)、アーセナルは無敗のままリーグ優勝するし(04年)。それから後半で、マンUとアーセナルでのチームメイトでのベストイレブンを選出するんですよね。そのチョイスの仕方も、それぞれのクラブのカラーが出ていて面白いと思います。

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――次は『スナカリ』。一転してエスニックの匂いがする作品ですね。

福島 これはネパールのドキュメンタリー作品で、各国の映画祭で受賞しています。山奥の村で女の子たちがサッカーごっこをしていると、外の村から対外試合の招待が来て遠征するというお話。でも、彼女たちは村を出たことがなかったし、親からすれば貴重な労働力ですから「悪霊に取り憑かれたらどうするんだ?」みたいな感じで最初は反対されるわけです。そこを何とか説得して、楽しく歌を歌いながら山を超えて、初めてのアウエー戦に臨むというのが大筋の流れですね。肌触り感は『アザー・ファイナル』に似ています。

――FIFAランキング202位のブータンと203位のモントセラトによる「最下位決定戦」のドキュメンタリーですね(編集部註:いずれも2002年当時)。あれは面白かった!

福島 映像も素晴らしくきれいですし、彼女たちが試合を通して初めて味わう感情というものがしっかり表現されているのもいい。高校選手権の「最後のロッカールーム」的な感動も味わえると思います。

© WOWOW

――次は『WHO I AM リカルディーニョ』、これはブラインドサッカーのブラジル代表、リカルディーニョのドキュメンタリーですね?

福島 そうです。WOWOWでずっと2020年のパラリンピックに向けて、国際パラリンピック委員会と一緒に共同制作のドキュメンタリーを作っているんです。それで、何人かのパラアスリートたちを50分くらいのドキュメンタリー作品に仕上げているんですけど、これはそのうちの1本。リカルディーニョはブラサカ・セレソンの10番ですね。

――この人、さいたま市ノーマライゼーションカップで来日していますよね(参照)

福島 そうです。また3月に同じ大会に出場するために来日するはずです。14年にリオで行われたパラリンピックで、ブラサカのブラジル代表はやはり優勝がノルマでした。状況としてはネイマールと一緒だったんですけど、リカルディーニョは本番直前で怪我をしてしまう。そこをどう乗り越えていくか、というストーリーですね。選手たちの技術もさることながら、周囲のサポート体制の厚さについても注目していただきたいです。

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