宇都宮徹壱ウェブマガジン

かつてなく厳しい最終予選に寄せて 日本代表をめぐる構造的な問題を考える

 UAE戦の翌日、次のバンコク取材の荷造りの合間に、このコラムを書いている。試合についてはこちらで書いたとおりだが、本稿ではもう少し個人の本音ベースで、現在考えていることを記す。

 今回の結果は、非常に残念だったと思っている。ただし、さほど大きな衝撃を受けたわけではない。「日本がアジアで勝てなくなってきている」という事実は、昨年のアジアカップで明確に突つけられた事実であるし、さらに言えばアンダー世代の国際大会やACLでもすでに起こっている現象だ。その延長線上に、今回のUAE戦での敗北がある。

 実は徹マガでも昨年のアジアカップ決勝のタイミングで、同業の河治良幸さんと「日本サッカーの成長は明らかに鈍化している」と題して、アジアにおける日本の地位低下について語り合っている。バックナンバーが見られない非会員の皆さんのために、以下、引用しよう。

――実際にアンダー世代の大会を取材していると、アジアの勢力図の変化というものは強く感じますか?

河治 かなり感じますよ。アンダーの大会だと、もはや「日本は勝って当たり前」みたいな感じはないんですよね。U-19だと、カタールには化け物みたいなタレントがいるし、ウズベキスタンもフィジカルがしっかりした上にスキルのある選手も多い。日本よりも力が上だなって感じるのが、6~7チームくらいあるんですよ。

――なるほどねえ。その延長線上にA代表があることを考えると、今度のワールドカップ予選は決して楽観はできないですよね。

河治 ちょっと言い方が変なんですけども、僕は「ロールプレイングゲーム現象」だと思っています。日本はJリーグができて20年経って、右肩上がりの経験値を積んで、ドラクエみたいに装備してぐんぐん強くなっていくという幻想があった。でも実際のサッカーって、どんなチームでも本当は山あり谷ありじゃないですか。確かに日本は、この20年くらいですごく成長しましたけど、決して永遠に右肩上がりで成長できるわけじゃない。

――それこそ、かつてのバブル経済が永遠に続くんじゃないか、みたいな幻想ですよね。そういえばJFAの2005年宣言によれば、今年の日本は「世界のトップ10を目指す」ことになっていたはずなんですが。

河治 10年前の想定と比べて、日本サッカーの成長は明らかに鈍化していますね。何かテコ入れをしないと難しい。テコ入れの仕方にしても、あんまりにもJFA主導ですべてをやってしまうと、トップダウンの歪みによって伸びるはずだった子が伸びなくなったり、サッカー続けるはずだった子が続けなくなったり、という事も起こるかもしれない。いずれにしても、ちょっと甘い想定が、日本サッカー界全体に蔓延していたのは間違いないですね。

――あんまり悲観的なことは言いたくないし、書かないようにしているんですけど、この状況が改善されないと、本当に最終予選が怖いですね。

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