発表】きみの、あなたの《ホケツ》話②ホケツの子がつぶやいた言葉にあなたは答えられますか?「『コーチはいいチームにしよう!』とか言うけど、いいチームって一体なんなの?」
▼ きみの、あなたの《ホケツ》話②
23年12月に拙著「3年間ホケツだった僕がドイツでサッカー指導者になった話」が重版出来となったことを記念して、読者の方々に「僕の、私の《ホケツ》話」を募集するという企画を行っていた。いくつかご投稿いただいた中、2作品を優秀作品としてこちらで選出。《ドイツのお菓子セット》をプレゼントさせてもらった。
さて、《ホケツ話》優秀2作品を僭越ながら選ばせてもらったのだが、第一段となる前川敏也さんの《ホケツ話》のあとだいぶ時間を空けてしまった点をお詫びいたしたい。景品の《ドイツお菓子セット》も前回帰国時に送る予定が間に合わず、だいぶ時間が経ってからようやくお届けすることができた。
《ホケツ》と一言で片づけてしまいがちだけど、そこにはいろんなストーリーがある。僕には僕の話があったように、みなさんにはみなさんの話がある。ほろ苦かったり、時に勇気が湧いてきたり。そうした一人一人の物語に目を向け、耳を傾け、心を通わす。それがコミュニケーションの第一歩。
今回の話は僕がとあるサッカーママの悩みを親交ある指導者の方から耳にしたところから始まった。
本来なら愉しい小学生年代のサッカーライフを送るはずだった子が”補欠”というレッテルを貼られ、出場機会が少なく、たまにしか出してもらえない試合でミスをすればコーチ以外にチームメイトからもミスを責められ、試合に出ることが怖くなってしまいサッカーが苦痛になってしまった我が子から母に告げられた言葉。
「コーチはいいチームにしよう!とか言うけど、いいチームって一体何なの?」と。
子どもたちがグラウンドに集まってくる。笑顔で、ワクワクして、楽しみに。なのに終わって練習に帰るころには笑顔がなくなってしまうことがある。残念だけど、日本のあちこちで、まだまだたくさんある。ただサッカーが好きで、サッカーをしたくて、サッカーを楽しみたくて、一生懸命やりたくてという子どもたちが、罵声を受け、不当な扱いを受ける話を今日も目にする。試合に出られない子が今でもまだまだたくさんいる。
サッカーママからの悩みもまさにそこだった。そんな話を聞いて僕は以前こんなコラムを書いたことがある。
特に育成年代におけるスポーツの現場で何よりも大事なのは安心と安全。これがない中で「チームが強い」だ、「強豪チームへ進む選手が出ている」だのはたわごとでしかない。
サッカーを好きで、サッカーがうまくなりたくて、毎回の練習を楽しみにして、いつも一生懸命取り組んでいて、そんな子が試合に出られないなんてことはありえない。
誰だってうまくなりたいよ。誰だって試合に出て活躍したいよ。誰だって試合に勝ちたいし、頭でイメージしているすっごいプレーをやって見せたいんだよ。誰だってヒーローになりたいんだ。
うまくなって上のレベルを目指すことが悪いなんてことは全くない。
でもさ、
なんでうまくなけりゃ試合に出ちゃダメなの?
なんで試合に出るための資格が必要なの?
なんでそこまでして勝とうとしなきゃダメなの?僕らはみんなサッカー選手の前に人間だ。みんなものすごいポテンシャルを秘めた存在だ。成長のための機会はフェアに与えられるべきなんだ。やっても無駄なんて誰がきめんのさ?
もちろんみんながみんな覚醒して、プロレベルになれるなんてことはないよ。夢を見ることと夢に溺れることは違うんだからそこは分けて考えないといけない。現実を見て、ひとりの人間として歩むための頭と足をもたないといけない。
だからといってプロになれなきゃ意味がないなんてことは絶対にない。スポーツをすることで僕らは幸せの意味を心から知るチャンスを得ることができるんだ。体を動かして、頭をひらめかして、心を解放して、人をつなぎ合わせる。その相乗効果が自分と仲間と、そして周りの人たちの力をさらに高めてゆく。
勇気をもってチャレンジして、新しい世界に出会えるっていうのは、僕らが生きている中でとても大事なことじゃないか。そして本来スポーツというのは、その素晴らしさを自然に学ぶことができるはずなんだ。そしてそのための機会というのはだれにでも与えられた大事な権利だ。
僕の言葉は響いてくれたようだ。こんなコメントをもらえた。
そう!みんなヒーローになりたいんだよ。プロになるとかじゃなく、自分のいる所で、キャプテン翼やメッシみたいになってみたいの!学校の休み時間にやるサッカーでキャプテン翼ごっこやるノリ!小学生男子は、特にそんなものだよ
息子の友達でチーム辞めた子は言ってた。「遊びでやるサッカーは楽しいけど、チームのピリピリしたサッカーは嫌だ」と。
息子さんは小学校を最後にサッカーから離れる決断をした。その後日談を送ってもらえたので、皆さんにもぜひ読んでいただきたい。
サッカーとは、スポーツとはだれのものなのか。どうあるべきなのか。今の取り組みは十分なのか。大人と子供、本質をより知っているのは誰なのか。
《ホケツ話》にじっと耳を傾けてみよう。
(残り 1409文字/全文: 3451文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ