【きちルポ】長谷部誠のドイツでのキャリアを振り返る③長谷部が大事にしている人間としてのバランス力とは何か?
▼ 人間としてのバランス力
長谷部誠は自身のさらなる成長をいつも切望していたのが心に残っている。どんな試合のあとでも「もっとなにかできなかっただろうか。もっとうまくチームを助けることができなかっただろうか」、と自己反省を忘れない。
長年戦っているとチームの調子が悪くなることはある。やりたいことができずにフラストレーションばかりがたまっていくことがある。連敗中はどうしても雰囲気が悪くなりがちだ。そんなときに大事なのは自分たちへの信頼だと長谷部は強調していたことがある。
「新しいチームで、かなり選手が新しくなったので、監督も言っているのはとにかく『我慢』と『とにかく続けること』と『成長を止めないこと』と。それと自分たちのこの自信を絶対に失わないというのは、連敗していた中でも言われていた」
チームが苦しい時に助けられる存在でありたいと話していたこともある。
「周りが動けてないときに、自分のやることが多くなる分、うまくいかないことが多くなってくる。チームが走れて動けて頑張れているときは、自分がすごく狙いを定めやすいとプレーの中で感じてた。難しい状況でもチームを助けられるのが本当にいい選手だと思う。そういう意味ではまだまだもっとよくしなきゃいけないというところを余計に感じた」
現状に妥協せず、成長に貪欲。そんな長谷部だから長年一線級で活躍することができていたのだろう。当時ザンクトパウリでプレーしていた宮市亮が「やっぱりパス一つにしても、パススピードにしても、落ち着きにしても。あの年齢で、今年36歳になると思うんですけど、まだフランクフルトの中心でリーダーとしてやっているというのはとんでもないことだと思いますね」と重鎮の健在ぶりに舌を巻いていた。
21年3月に契約延長の記者会見が行われたとき、同僚でオーストリア代表DFマルティン・ヒンターエッガーが『マコトは遺伝子が違う!』といじっていたことを記者から伝え聞くと、普段のスタンスについて次のように明かしてくれた。
「これだけ長くやっている理由は多く聞かれるんですけど、そんなに明確なことはわからない。一つあげると人間としてのバランス力かなと思ってるところはある。
小さいところでいえば食べ物。もちろん僕は食事に気をつけてはいる。家で日本食とか体にいいものを食べるようにはしている。でも僕はお菓子も大好きで、お菓子も食べます(笑)。揚げ物も食べる。揚げ物を食べないサッカー選手もいるけど、僕は食べる。お菓子も大好きで、食べるんだけど、自分の中でこれ以上は食べないと決めたら食べない。
そのバランス感覚かなと思ってますね。トレーニングでも、僕は年齢を重ねるごとにトレーニングは多くやらないと(パフォーマンスが)落ちていってしまうんじゃないかなと思うタイプので、その調整するバランス感覚だったりとか。頭を使って、自分にあった、自分らしさの中でそこを調整する。
しいてあげるのだとするとそこかなと。
けがをしないところはもちろん親に感謝しなきゃいけないところもある。体のケアに関しては自分でもするし、治療してくれるマッサージの方々にも感謝。自分一人だけのものでもないと思ってます。こうやって長くできるのは、自分が努力している部分もあるけど、それ以外の周りの人達との兼ね合いもやっぱり僕は運よくあったんじゃないかなと。クラブとか、監督とかとの相性とか。自分じゃない、ほかの方の部分も大きいかなと」
(残り 2547文字/全文: 3959文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ